「海外出稼ぎについては、コロナ前から耳にはしてました。でも日本でそれなりに稼げてたから、特に行く理由がなかった。コロナで稼ぎが落ちたことで、行く理由ができたんです。海外出稼ぎは危ないとかって話も聞くけど、私はやったことがないことや、知らないことについて、経験もしてないのに決めつけるのは嫌。だからまずは行って経験してみようと思って。ただし、私はホストに出稼ぎを紹介されたわけじゃないですよ」
キョウコさんが「ホストに出稼ぎを紹介されたり、強要されたわけじゃない」と強調するのは、今、ホストにつぎ込むお金を稼ぐために、ホストを介して出稼ぎをする女性が少なくないからだ。それは一体、どういうことなのか。ここで少し、その構図について説明しよう。
ホストクラブと海外出稼ぎの知られざる関係とは?
ホストクラブでは、担当ホストごとに客が支払った金額が、それぞれのホストの売り上げになる。ただしこの売り上げは、全てがホストの懐に入るわけではなく、店とホストとの折半となる。つまり、客が使った金額の約半分が、担当ホストの収入になるシステムだ。
ホストクラブには「売掛(うりかけ)」という制度があり、客は来店時にお金を持っていなくても、ホストにお金を“借りる”ことで遊ぶことができる。例えばホストクラブで遊んで50万円の会計だったとすると、ホストが女性に代わって、半分の25万円を店に入金する。店に支払う分を、客に代わってホストが立て替えるという形だ。ホストに支払う分の残り25万円とともに、客は担当ホストに50万円の借金をしたということになる。この売掛をどう返すかは、客とホストとの間で決めることで、基本的に店が関与することはない。
国内の風俗店から海外出稼ぎへと広がる実態
こうしてホストへの借金が膨らみ、返済に困るなどした客が、ホストから出稼ぎを勧められるという流れがある。多くの場合、出稼ぎを紹介するスカウトマンやエージェントらが間に入る形で、その時に募集のある風俗店を紹介される。もちろん、ホストと出稼ぎを斡旋するスカウトマンらはつながっている。これまでも同様の流れで、客の女性たちが国内の風俗店に出稼ぎする動きが見られていたが、それが今、海外出稼ぎへと広がっている実態がある。
キョウコさんに話を戻すと、「ホストにお金をつぎ込んではいるものの、自分はこうした構図に当てはまらない」という意味で、「ホストに出稼ぎを紹介されたわけじゃない」と口にしたわけだ。