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挨拶をしてもそっけない、親ロシア派の住民

 発電機の設置を終えるとすぐに車でその場を離れた。団地の合間を抜けようとした時にやはり、ポポポポッと遠くで砲撃音が聞こえた瞬間、近くでバンッバンッと着弾した。車の窓ガラスが衝撃波でバリバリと割れそうな勢いで震えていた。窓ガラスが割れて飛び散らないように開けた瞬間に次弾がバゴーンッと私達の目の前100メートルほどの団地に着弾した。衝撃の凄まじさに体がこわばった。破壊された団地の破片がバラバラと車に降ってきたが、お構いなしに団地の地下へと逃げ込んだ。ボランティアたちもこんなに近くで攻撃を受けるのは初めてだそうだ。

ハルキウで団地に砲撃が着弾した瞬間(2022年4月撮影)

 曇った空の薄暗さが不気味な音が鳴り響くシベルスクの街をさらに不気味にしていた。街を歩いていると時折、歩いている住民とすれ違った。話を聞こうとこちらから挨拶をしてもかなりそっけない。アンドリが「どうもこの街に残っている住民は親ロシア派が多いみたいだ」と言う。アンドリも以前に来たことがあり、そう感じていた。この街に着いてからアンドリはあまり車を降りたがらない。雪がぱらついて寒いのもあったかも知れないが。

「ロシアになればウクライナよりいい暮らしになる」

 ウクライナの団地はほとんどが旧ソ連時代に建てられたものだ。団地には地下室が設置されてある場合が多い。住んでいる住居が無事でも砲撃の多い地域の住民は地下室で避難生活を送っている。日中は特にやることも無いので電気もない地下から出て団地の軒先で暇を潰している。そんな人達を見つけ近づこうとすると「ニェット! ニェット!(だめだ! だめだ!)」と接触を拒否された。取り付く島もなかった。

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人気のない通りに急に現れたバイク。話しかけても答えてはもらえなかった

 アンドリも他のボランティアたちも、親ロシア派はロシアの世界を待っていると言う。ロシアの世界とは。私のウクライナ侵攻後のイメージだと独裁体制でプロパガンダに溢れ、人の命も軽く、なにも信用できることなど無いのだが、彼らが見ている景色は違うらしい。アンドリも付いてきた報道官も「彼らは他の世界を知らないんだ。ソ連時代を懐かしんでいるんだ」と言う。2014年のウクライナの紛争を取材したドキュメンタリーでも、ウクライナから独立を求める親ロシア派住民はインタビューで「ロシアになればウクライナよりいい暮らしになる」と答えていた。