「母親から直接的な暴力を受けながら成長した彼女は、親のことにも自分で落とし前をつけつつ、強くたくましく生きています。
“つらく苦しく痛い体験と環境が、はるきちゃんを強くさせたのかもしれない。けれど、そんな環境は絶対に必要ない。それでも自分には未来があると気づいた瞬間から、解毒は始まる”
そうつづられた尾添さんのナレーションには、友人としての絆と、ともに明るい未来を生きようという決意が感じられます。」(同上)
第7章に登場する「谷瀬(やせ)さん」の母親は統合失調症で、彼女は他の親族や世間が母親に向ける態度に幾度となく傷つけられる。
「これは前作で尾添さんの人生を大きく動かしたカウンセラーの方のエピソードなのですが、彼女自身がいかに壮絶な人生を歩んでいたかがわかります。前作中のセリフはその体験があったからこそ出たものだったと実感できますし、はたから見れば『毒親』とくくられる中にも、確かに存在する愛に涙しました。」(同上)
「離れる選択肢もある」と気づいてほしい
作品の根底にあるメッセージは「改善不可能な壊れた家庭は身近なところにも存在する」ということだ。作者の尾添さんは、前作から引き続いて「家族から離れる選択肢を選んでもいい」と発信している。
Sさんは『こんな家族なら、いらない。』について「前作の副読本のような趣で、一緒に読んでいただけるのがベスト」と語る。
「前作もそうですが、まずは自身の親や家族との関係性に違和感を覚えている人に届けたいです。
『毒』かどうかの線引きは人それぞれですし、いろいろな事情がありすぐには行動に移せない方も多いと思います。ですが、自分が自分らしく生きられていないと感じ、その要因が家族によるものとわかっている場合は、離れる選択肢もある、ということに気づいてほしい。また、今作の登場人物ほどつらくはないと感じて、今のままで前向きに生きられるなら、それもひとつの気づきです。
今作が、家族のあり方を見つめなおすきっかけになったり、より幸せに生きるためのきっかけになれたなら、何より嬉しいです」(同上)