ウクライナ保安局は2月22日、ホームページで、ロシアが北朝鮮から入手した弾道ミサイル「火星11」(KN23/24)20発以上をウクライナに向けて発射したと明らかにした。昨年12月末以降、南部ザポリージャ州や首都キーウ、東部ドネツク州やハルキウ州への攻撃で、少なくとも民間の24人が死亡し、100人以上が負傷したという。北朝鮮製の弾道ミサイルの残骸だとする複数の写真も公開した。

金正恩総書記 ©朝鮮通信=時事

 米韓関係筋によれば、ロシア極東地域のドゥナイ、ボストーチヌイ両港と北朝鮮北東部の羅津港とをロシア貨物船が往復し、北朝鮮製の砲弾や短距離弾道ミサイル、移動発射台などをせっせとロシアに運んでいる。弾道ミサイルは短距離のKN23と24で、計40発前後にのぼるとみられる。

 韓国の情報機関、国家情報院も昨年11月1日、韓国国会の情報委員会に対して「貨物船や輸送機を使い、計10回以上にわたって、北朝鮮がロシアに砲弾100万発以上を提供した」と説明している。国情院は100万発について、ロシア軍が約2カ月の間、戦闘を継続できる量に相当するとも指摘した。韓国の申源湜国防相は26日、北朝鮮からロシアに対し、少なくとも数百万発の砲弾がロシアに渡ったとの見方を示した。

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北朝鮮の支援で息を吹き返した

 軍事関係筋によれば、ロシアは砲弾については、ウクライナ軍と対峙している最前線で使っている。現在、戦闘正面ではロシアが1日1万発以上を確保しているのに対し、ウクライナは1日5000発以下にとどまっているという未確認情報もある。「5000発もあればよいではないか」という考えも浮かびそうだが、砲身が焼き付かない範囲での最大発射速度は1分に2発程度で、5分間で10発を発射する計算だ。戦闘地域に砲門が500展開している場合、各砲門あたり最大でも1日10発しか撃てない計算になる。

 陸上自衛隊東北方面総監を務めた松村五郎元陸将は「補給さえ可能なら、突破正面では各砲門あたり1日100発近く欲しいところです」と語る。ロシア軍も十分とは言えないかもしれないが、北朝鮮の支援で息を吹き返したと言えるだろう。

 また、弾道ミサイルはウクライナ保安局が伝えているように、主にロシアが制圧していないウクライナの各都市への攻撃に使われているようだ。殺傷能力が極めて高いとまでは言えないが、ウクライナの市民に恐怖を植え付け、士気をくじくうえで大きな役割を担っている。

 北朝鮮は今年に入り、主に巡航ミサイルによる軍事挑発を続けている。ロシアはすでに購入したミサイルの半数以上を使ったとみられ、今後も北朝鮮に供給を求める可能性が高い。北朝鮮としては短距離弾道ミサイルの在庫に不安が出てきたため、代わりに巡航ミサイルによる軍事挑発を行っているとも考えられる。