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弾道ミサイルをもらったプーチンが、金正恩に贈った「お礼の品」は…? 北朝鮮がロシアから得た「3つの見返り」

2024/02/28
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 同時に、米朝協議が始まれば、中国も黙ってはいられなくなる。米中の対立が深まっているなか、中国にとって北朝鮮は大切なカードだ。北朝鮮が米国と接近することを座視はできない。2018年、米朝首脳会談の開催が決まると、すぐに習近平主席は金正恩総書記を北京に招いた。北朝鮮はその時の再現を狙っている。

日本に接近する理由

 一方、金与正氏は2月15日、「(岸田文雄)首相が平壌を訪問する日が訪れることもあるだろう」という談話を発表した。1月5日、能登半島地震を巡り、金正恩氏が岸田首相にお見舞いのメッセージを出したことに続き、この談話は、明らかに日朝首脳会談へ日本をいざなうためのメッセージだ。韓国政府元高官は北朝鮮が日本に接近する理由について「日本が米朝協議に口を挟めないようにするのが狙いです」と語る。

 米朝と日朝の協議が並行して進めば、日本も北朝鮮のご機嫌を損ねる真似はしづらくなる。前回の米朝首脳会談を巡り、当時の安倍晋三首相はトランプ氏に「在韓米軍撤収や核保有を認めることは許されない」と主張したという。北朝鮮は当時の失敗を繰り返さないため、日本の口をふさぎにかかったとみるべきだろう。

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 日本人拉致問題を巡っては、北朝鮮は2014年、水面下で日本に対し、拉致被害者に対する再調査の中間報告として、政府が拉致被害者として認定した田中実さんと、警察庁が「拉致の可能性を排除できない行方不明者」としている金田龍光さんが平壌で生存していると伝えた。同時に、「これで拉致問題は最終解決した」と主張した。当時の日本は、世論の理解を得られないとして中間報告を受け入れなかった。北朝鮮は今回、同じ主張を繰り返し、日本に譲歩を迫る考えだ。

 2月24日にサウジアラビアで開かれた女子サッカーのパリ五輪最終予選の日本対北朝鮮戦でも、北朝鮮はイエローカードを1枚ももらわなかった。北朝鮮選手の努力もあっただろうが、日朝関係改善に向けて環境整備を図りたい北朝鮮当局の意向も反映していたとみるべきだろう。

北朝鮮の狙いは…?

 北朝鮮はロシアとの接近、新冷戦の始まりなどで経済的に一息ついた状態だが、決して余裕があるわけではない。統一政策をあきらめ、韓国を敵視し始めたのも、北朝鮮内に韓国にあこがれる風潮が強まったことへの危機感があるからだ。北朝鮮は今、米国や中国から最大限の利益を得ることを目標に動いている。

 トランプ政権との間で核・ミサイル協議が妥結すれば、返す刀で、日本に対して「もう、拉致問題も核・ミサイル問題も存在しない」と主張し、日朝国交正常化と大規模な経済支援を求めてくる可能性もある。日本の外交当局はもちろん、岸田文雄首相ら政治家も、「北朝鮮が接近してきた」と浮かれるのではなく、世界の状況を俯瞰したうえで、日本の国益を守る外交が求められている。

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