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視察する金正恩の姿も…「迎撃困難、豪速球かつ変化球」高性能化する北朝鮮“核兵器”の脅威とは

視察する金正恩の姿も…「迎撃困難、豪速球かつ変化球」高性能化する北朝鮮“核兵器”の脅威とは

2024/01/08

source : ノンフィクション出版

genre : ニュース, 社会, 国際, 韓国・北朝鮮

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 核弾頭をすでに35~63個保有しているとの分析もある北朝鮮(米シンクタンクISIS報告書 2023年4月10日付)。

 2023年は世界最大級の大陸間弾道ミサイル「火星17」や、北朝鮮としては初の固体推進剤を使用した「火星18」という推定射程距離が約1万5000kmの大陸間弾道ミサイルの発射試験を繰り返しただけではなく、ミサイル以外の核兵器計画を発表した年であった。

北朝鮮の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星砲17」型の試射 ©時事通信社

金正恩総書記が兵器を視察する画像がメディアに

 なかでも注目されるのは、戦術核弾頭と主張する「火山31」やそれを組込む兵器を金正恩総書記が視察する複数の画像を北朝鮮メディアが3月に掲載したことである。火山31は「推定直径40~50cm、推定全長90cm」と小型で、重量も200kg以下ならば、多様な兵器に搭載できるとされる。爆発威力は第2次大戦中に広島に投下された原爆「リトルボーイ(推定威力15~16kt)」を上回る推定20ktとの報道もある。

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 北朝鮮メディアは、この火山31を搭載する兵器として、KN-25(射程:380km)、KN-24(同410km)短距離弾道ミサイル、変則軌道でミサイル防衛を避けて飛ぶKN-23短距離弾道ミサイル(同450km)等、韓国を射程とする弾道ミサイルの他、日本にも届きうる兵器にも搭載する方針を明らかにしている。

レーダー等での捕捉が難しい戦略巡航ミサイル

 それはKN-23の射程延長型(同800km)や潜水艦から発射する同水中発射型、さらに戦略巡航ミサイルの「ファサル1」と「ファサル2」だ。この巡航ミサイルは、速度は弾道ミサイルよりはるかに遅いものの、飛行高度は数十mと低く、しかも八の字飛行が可能なほど機動性が高いため、レーダー等での捕捉が難しいと考えられている。

 北朝鮮メディアによれば、ファサル1の飛行実績は約1500km、ファサル2は約2000kmで、どちらも日本国内のほとんどが射程に入る。2023年3月22日に実施したファサル1とファサル2を2発ずつ発射・起爆した試験で、模擬核弾頭を搭載した両ミサイルが高度600mで起爆したと北朝鮮メディアは主張。これは1945年8月6日、広島上空に投下されたリトルボーイが起爆した高度に匹敵する。

 迎撃が難しいファサル巡航ミサイルに内蔵される火山31が、リトルボーイとほぼ同じ高度で起爆し、リトルボーイを上回る爆発威力を示すなら、どんな事態が生起しうるのか。日本としては無視できるものではないだろう。