今年デビュー10周年を迎えた上田岳弘さん。2月9日に発売された最新作『K+ICO(ケー プラス イコ)』は、ウーバーイーツ配達員のKと、TikTokerの女子大生・ICOが主人公だ。きわめて現代的なモチーフを取り入れたこの作品に、上田氏が込めたものは何か。上田氏に聞いた。
ネットスラングの「いやな感じ」
最近知って衝撃を受けたネットスラングに、「負け組ランドセル」というものがあります。
ウーバーイーツの配達員たちが背中に黒い巨大なバッグを背負っている姿が、低学年の小学生が体に似合わないほど大きなランドセルを背負っている姿に似ているところから来たようです。
その言葉には、正規雇用に就けずギグワークをしている人たちへの明らかな揶揄が含まれています。
はじめて聞いた時、とてもいやな感じがしたのと同時に、この世界の残酷さをはからずも言い当てているような気がしました。僕が新作『K+ICO』を書いた理由は、その感覚と共通しているのかもしれません。