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炎上したコピーライターのツイート

 僕は、長時間街を散歩するのが好きなのですが、ウーバーイーツ配達員が自動車にひっかけられて倒れている姿を、立て続けに二度ほど見たことがありました。まだコロナが明ける前、外食できない人たちが盛んにウーバーイーツを頼んでいた頃です。

 その倒れている姿が、早朝の街でたまたま見かけた路上で果てているネズミの姿となぜか重なって見えたのです。どちらも東京という大都市を縦横に走り回っていながら、ふだんは道行く人々の目にとまらない存在です。「犠牲」になってはじめて可視化される。

 ウーバーイーツを頼む客たちは、届けられた料理にだけ目が行き、配達員に感謝の言葉をかけることはあまりないのかもしれません。

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上田岳弘さん ©三宅史郎/文藝春秋

 もうひとつ、象徴的な出来事がありました。

 あるコピーライターの方が、ウーバーイーツ配達員の服装は清潔感に欠けるのではないか、という趣旨をTwitter(現X)に書き込み、「上級国民の上から目線だ」と炎上したのです。

 件のコピーライターの方は、わざわざ「ウーバーイーツを頼んだことはない」と断っているので、どういう文脈から上記の書き込みをしたのかわからないのですが、前述の「負け組ランドセル」と同じような揶揄のトーンを感じる人もいたということでしょうか。

ラベリング社会の弊害

 ネットスラングには、他にもえげつないものがいっぱいあります。

 どの言葉にも、相手のことをよく知らないのに、先入観だけでレッテル貼りをしてしまう、「ラベリング社会」の弊害を感じます。

 こうした風潮は、SNSの普及と表裏一体のように思えます。

 デジタル化による情報量の爆発で、ものごとの内実を細かく見ている余裕がなくなった。だから、とりあえず短くキャッチーなラベルを貼りつけて、「わかった気」になっている。

 しかし、その乱暴なラベリングをされた側は、深い絶望感に陥るしかありません。