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「基本は、体育会系の人間です(大学時代にホッケーの日本代表)。長くレースドライバーとして活動したように、好奇心が旺盛で、少年のように純粋な人です。社内でも、面白い話や部下の斬新なアイデアには目を輝かせて、食い入るように耳を傾けています」(B氏・元社員)

 テスラがイーロン・マスクCEOの斬新な発想と果敢な行動で一気に自動車産業で時価総額トップに登り詰めたように、変革期には強力なリーダーシップが要求されます。

若かりし頃のイーロン・マスク氏と豊田章男氏 ©getty

「良い人」であるがゆえに、大胆な改革が必要なとき、大鉈を振るえるのか。そうした懸念もあります。

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組織に閉塞感が漂っている

 フォードでは創業家のフォード一族が40%の株を保有しているのに対し、トヨタでは豊田一族の保有比率は2%足らず。豊田章男会長がトップであることや長男・大輔氏(ウーブン・バイ・トヨタのSenior Vice President)がその後継者と目されていることに異論はないのでしょうか。

長男の大輔氏(写真:ウーブン・バイ・トヨタHPより)

「章男氏くらいの学歴(慶応大学法学部卒)の社員はいくらでもいるわけで、才能としてはトップというわけではありません。ただ、世界37万人の従業員を束ねるには創業家という旗印が有効で、その点、章男氏はトヨタにとって唯一無二の存在と言えます。私は章男氏や大輔氏のトップ就任に賛成です」(E氏・元社員)

「いつまでも『豊田家の会社』では、我々日本人はともかく、世界の従業員や株主は納得しないでしょう。グローバル企業トヨタにとって、豊田家による支配は決して良いことではありません。将来もし大輔氏がトップになったら、北朝鮮のことを笑えなくなります」(B氏・元社員)

 取材の最後に、今後のトヨタの課題について聞いてみました。まず指摘があったのは、先ほどの「CASEへの対応」。さらに多くの社員が「組織の閉塞感の打破」を強調していました。

「私の周囲では、有望な若手・中堅社員が続々と退職しています。人事部はアルムナイ(退職した社員の同窓会組織)を立ち上げるなど対応していますが、どうでしょうね。逃げた魚を追うよりも、組織に閉塞感を持つ若手・中堅社員が増えていることに、手を打つ必要があると思います」(F氏・現役社員)