死因については、ウクライナ国防省の情報部門トップが25日に「がっかりさせるかもしれないが、ナワリヌイ氏は血栓で亡くなったとの情報を得ている」と発表した。ロシア国営テレビもテレグラムで、ナワリヌイ氏が散歩の後に倒れ、血栓が死因であると発表している。
血栓というのは血管内に血の塊が詰まってしまい、血の流れを止めてしまう病気だ。ロシアもウクライナも「死因は血栓」と一致している。
ナワリヌイ氏は「クリミアは本来ロシア領土」と主張するなど、ウクライナとの考えに隔たりがある。こうしたことから、ウクライナではナワリヌイ氏に不信感を持っている人も多い。ウクライナ側が早々に暗殺の疑いを打ち消したのは、こうした事情も関係しているのかもしれない。
KGBの「ワンパンチ」暗殺術
ロシア側が遺体を返したということは「暗殺説」の可能性はないのだろうか。
ロシアからフランスに亡命した人権活動家のウラジーミル・オセチキン氏は、旧ソ連の情報機関「KGB」に伝統的に伝わる、打撃による「ワンパンチ」暗殺術が使われたとしている。
これはイギリスのタイムズ紙の取材に答えたもので、刑務所関係者からの情報として、ナワリヌイ氏は、気温が-27℃の屋外の独房で毎日2時間半過ごさねばならなかったという。これによりナワリヌイ氏の血液循環を最小限に低下させ、体を破壊。その状態で心臓部を狙って打撃を加えることによって死亡させるという術が「ワンパンチ」と呼ばれる。
新潟大学心臓血管外科の榛沢和彦特任教授によると、寒ければ寒いほど血栓ができやすい状態になり、その状態で心臓を殴られると死に至るケースもある。また、証拠も残りにくく、死亡原因もわかりにくいという。
寒さで血栓ができたところに打撃を加えて殺すという、証拠が残りにくい暗殺術。オセチキン氏は「訓練された工作員なら数秒で殺せる」としている。
このインタビューは先週行われたが、その時点ですでにオセチキン氏は、体内に痕跡が残るため「ノビチョク」などの毒薬の使用は考えにくいとし、打撃による暗殺の可能性が濃厚と指摘していた。実際に、ナワリヌイ氏の胸の部分にはあざがあったという情報も出てきている。
過去に、この「ワンパンチ」暗殺術が使われた例はあったのだろうか。
暗殺といえば毒物や銃を使ったものを想像しがちだが、実はこれまでにも反プーチンの人物たちが、交通事故や首つり自殺などで不審な死をとげた例はいくつかある。
2024年1月には、プーチン氏に批判的だった詩人のレフ・ルビンシテイン氏がモスクワ市内で交通事故死している。そのため、証拠が残らない形でのナワリヌイ氏暗殺というのは否定はできない。
(「イット!」 2月26日放送より)