2022年上半期(1月~6月)、文春オンラインで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。国際部門の第2位は、こちら!(初公開日 2022年3月2日)。
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ロシアのプーチン政権がウクライナに侵攻してから1週間が経つ。ロシア軍は首都キエフなどで激しい戦闘を続けている。それに対して、国際社会は厳しい制裁を次々と科すが、ロシアがひるむ様子はない。こうしたプーチン大統領の「暴走」とも言える決断について、元産経新聞モスクワ支局長の佐々木正明氏によれば、ロシア国内からも「ニェット」(NO)を掲げる批判のマグマが溜まりつつあるという。
だが、ロシア国内では、ウクライナ侵攻以前から一部でプーチン政権に対する批判の声が上がっていた。昨年1月にはロシアの反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏がプーチン氏が建てた「宮殿」に1400億ルーブルが投じられたと告発した。その動画の再生回数は1億回を超え、プーチン氏への批判は徐々に強まってきていた。ジャーナリストの小坂諒氏による当時の記事を再公開する(初出2021年2月1日。年齢、肩書きなどは当時のまま)
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ロシアの反体制派指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏(44)が主宰する団体「汚職との戦い基金」がユーチューブ上に投稿した「プーチン宮殿」の動画が、国内外で大きな反響を呼び起こしている。
動画の再生回数はロシアの全人口(1億4500万人)に近づきつつある
ナワリヌイ氏自らが説明役となって、「プーチン宮殿」の開発に1000億ルーブル(1400億円)が投じられたと告発した約2時間の動画は、投稿10日も経たない間に再生回数1億回以上に達した。至れり尽くせりの豪華絢爛の宮殿内には柔道家のプーチン氏のために畳のあるトレーニングルームまで用意されているという。さらに敷地内には、ヘリポートやスケートリンク、教会、円形劇場まで設置されている。ナワリヌイ氏は「内部を見ると、ロシア大統領は精神的な病であることがわかる。彼は富と贅沢に取りつかれてしまった」と指摘している。
動画はロシア語版のみだが、動画の再生回数はロシアの全人口(1億4500万人)に近づきつつある。このスピードだと、いずれ凌駕することは間違いない。プーチン大統領自身は「宮殿は私のものではない」と否定。1月30日にはプーチン氏の柔道の仲間である大富豪アルカディ・ローテンベルク氏が「私のものだ」と答えるなど火消しに躍起だ。ナワリヌイ氏の訴えは、経済不況と新型コロナウイルス禍に苦しむロシア国民の怒りの導火線に火をつけた。1月31日、極寒の中で行われたデモはロシア全土に及び、参加者は「プーチンは泥棒」などとスローガンを叫び、クレムリンの主への抗議の意を露わにした。
実は「プーチン宮殿」の概要が明るみになったのは、今回が初めてではない。すでにロシア国内でも「南方プロジェクト」として何度か報じられており、その都度、プーチン氏への関与が政権により否定されてきた経緯がある。