大雨の中、血走った目で一心不乱に車を磨き続ける「ヤバいオヤジ」も……。足立区にそびえるナゾの建物「ヤクザマンション」には一体どんな人たちが暮らすのか?

 足立区生まれ、足立区育ちの著者・山田ルイ氏の新刊『ルポ足立区』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む

足立区のナゾの建物「ヤクザマンション」には何がある? 写真はイメージ ©getty

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ヤクザマンション

 足立区・竹の塚には、「ヤクザマンション」と呼ばれる有名なマンションがある。その名の通り、ヤクザが数多く住んでいるマンションである。

 ヤクザマンションは、普通の住宅地に建っている。5階建てくらいの小規模なもので、いわゆる高級マンションのような雰囲気ではないため、ヤクザになりたてのチンピラや、年配の金を持っていないヤクザの居住者が多い。

 地元の人間は、極力ヤクザマンションには近寄らないようにしている。常に刺青まみれの男が半裸でウロウロしているし、非常階段からは物騒な怒号が聞こえてくる。僕の知り合いには、目があっただけで車で追いかけ回されたという人もいた。これでは怖くて近寄りたくないのも当然だ。

 ヤクザマンションには、有名な「ヤバい人」も何人かいた。一番恐ろしいのは、“飛び跳ねオヤジ”だ。

 そのオヤジは2階のベランダから下に停めてある車に飛び降り、奇声を発しながら車の上を飛び跳ね続けることで知られていた。しかも、全裸でだ。

 身体中に刺青が入っているため、周りの人間も怖くて注意ができなかった。ある時から急に見なくなったが、その行方は誰もわからない。

 何日間もぶっ続けで、マンションの前に停めてある車を磨いているオヤジもいた。シャブをキメると異常な集中力でひとつの物事に熱中してしまう。そのオヤジもシャブ中だったのだろう。

 大雨の中、血走った目で一心不乱に車を磨き続けるオヤジを見たときは、さすがに寒気がした。