「普通は逆なのでは?」

 なぜただのタクシー運転手がヤクザを鉄砲で射殺するような事件が起きるのか……? ここでは「足立区」の特異性について解説。足立区生まれ、足立区育ちの著者・山田ルイ氏の新刊『ルポ足立区』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む

なぜ一般のタクシー運転手がヤクザを射殺できるのか……? 写真はイメージ ©getty

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足立区で犯罪が多発する理由

 足立区では、毎日事件が起こっている。

 そのため、区外の人間からは「足立区はとにかく治安が悪い」というイメージを持たれてしまうこともしばしばだ。正直なところ足立区を愛する僕からしても、そういったイメージを否定することはできない。

 なぜ足立区では事件が頻発してしまうのか?

 ここでは僕なりの考えを書いてみたいと思うのだが、その前に僕の中で印象深い事件をいくつか紹介したい。

 20日午前3時40分ごろ、東京都足立区竹の塚の路上で、指定暴力団山口組系組員と神戸山口組系とみられる組員が乱闘、警視庁組織犯罪対策4課は同日、暴力行為法違反の疑いで自称住所不定、無職の阿部利幸容疑者(47)を逮捕した。同容疑者は神戸山口組系組員とみられ、山口組弘道会系の組員(41)ら3人が頭などに軽傷を負って病院に運ばれた。組対4課は分裂をめぐるトラブルの可能性もあるとみて調べている。(2016年3月21日「サンケイスポーツ」)

 これは以前、竹の塚で起きた乱闘事件についての記事だ。

「ルイ、明日は絶対に竹の塚では呑むなよ」

 事件前、友人たちから何件か連絡があった。その時は急に何を言い出したんだとあまり相手にしなかったが、翌朝ニュースを見て驚いた。詳しいことは分からないが組織間のトラブルのようで、報道の大きさを見ても重大事件だったことがうかがえた。

乱闘事件が起きた現場(写真:筆者提供)

 ヤクザの人間関係は、とにかくややこしい。

 昔からの仲で、普段は分け隔てなく一緒に行動することもヤクザ同士でも、組織間の微妙な関係が絡むとそうもいかないのが現実だ。

 おそらくこの事件も、そのような人間関係の絡みから乱闘に発展してしまったパターンなのではないかと思う。

 また、近年ではこのような事件も起きている。