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 17日午前3時45分ごろ、東京都足立区一ツ家2にある特定抗争指定暴力団山口組系の組事務所に砂利を載せたダンプカーが突っ込み、入り口付近の壁が壊れた。地元の別の暴力団とトラブルになっていたとの情報があり、警視庁組織犯罪対策4課は建造物損壊容疑で捜査している。けが人はいなかった。

 

 現場は、つくばエクスプレス六町駅の西約500メートルの住宅街。事件後、事務所の入り口付近はブルーシートに覆われ、警察官が警戒に当たった。(2020年1月17日「日本経済新聞」)

 暴力団の抗争といえば拳銃や日本刀を思い浮かべる人が多いかもしれないが、最近では車両を使ったケースも増えている。いわゆるダンプ特攻だ。車両を使った破壊行為は機動力などの面でリスクが大きい気もするが、なぜこのような手法をとるのだろうか。

 個人的な意見だが、これには「少しでも刑が重くなるリスクを軽減したい」という心理が働いているのではないかと思う。

 凶器を持って直接人を襲えば傷害や殺人未遂、場合によっては殺人になってしまうかもしれないが、事務所に車で突っ込めば器物破損や道路交通法違反だけで済むケースもある。小回りはきかないかもしれないが、流れ弾などで関係のない一般人を巻き込んでしまう可能性を考えれば、車両の方がいくらかは安全だ。

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 さらには派手な見た目で相手にプレッシャーをかけることもできるため、抗争を仕掛ける側としては一石二鳥である。

 時代や法律が変われば、抗争の道具も変わる。

 これはいつの時代も変わらない裏社会の常識だ。

 では、なぜ足立区ではこのような事件が頻発するのか。

 この問いについて考えるのにふさわしい、足立区を象徴する事件がある。

タクシー運転手がヤクザを射殺

 その事件が起きたのは、2009年のこと。

 指定暴力団である松葉会系組の幹部が、ある人物に射殺された。殺人の容疑で逮捕されたのはなんと、住所不定のタクシー運転手だった。抗争相手などではなく、一般のタクシー運転手である。

 運転手は幹部の腹などに発砲し殺害。

 幹部との間には金銭的なトラブルを抱えていたようだった。