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 もちろん、民間のスキルスクールや、自治体の補助などを使って学び直しをする人もいますし、国内外の大学院に通い始める人もいます。そうやって身に付けたスキルを元に転職活動を行い、社会に接続していく人がいます。

36歳で小学校教員を目指した

 36歳で教員になりたいと大きなキャリアチェンジを目指したタカヨシさんもそのうちの一人です。

 タカヨシさんは求人広告の営業、専門学校での広報と講師、その後地方自治体や省庁で行政事務の仕事に就いた経験がありました。傍から見ると転職も多く一貫性がないようにも見えますが、その時々では、考え抜いた転職だったそうです。

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 直近の地方自治体での勤務ではワークライフバランスの取れた職場に満足はしていたものの、ふと自分自身のことを俯瞰(ふかん)したとき「20年経ったらあの上司みたいになるのか。それでいいのか。後悔しないのか」と不安が頭をよぎったそうです。そんなある日、専門学校時代の教え子に出会いました。その教え子に今は行政で働いていると伝えたところ、すぐさま「え、先生は先生をやった方がいいですよ」と言われたそうです。「教員免許は持っていないから」と話すと、「だったら免許とったらいいじゃないですか」と気軽に返されたそうです。

 そのとき「簡単に言うなよ」と反応した一方で、何か待ちに待った許可を得られたような気持ちになったと振り返ります。タカヨシさんは、36歳から小学校教員を目指すことになります。

©AFLO

息を吸うように仕事ができた

「(教員を目指す私を)誰かあいつを止めてやれ、と冷ややかな声も聞こえてきたが、自分にとってはとても自然な選択だった」とタカヨシさんは振り返ります。約半年間の研修を受けることで臨時教員免許を発行してもらえる、認定NPO法人Teach ForJapan のフェローシッププログラムに出会えたことも大きな前進につながったそうで、周囲の反応とは裏腹に、新しい人生が開かれていったそうです。

 そして、退職した次の年度から小学校教員として働くことになったのです。「今から小学校教員なんてできるの? と心配もされたが、結果は私が思った通りだった。何のストレスもなく、毎日、息を吸うように仕事ができた。これまでの経験から、教育、行政の立場、管理職の考え、保護者の視点なども手に取るように理解できた」と、手応えを感じています。当時を振り返ってみて、「考えが変わったときに動ける自信を持つことが大切」とタカヨシさんは語ります。行政に入ったことも納得感があったがゆえの言葉かもしれません。

 入った当初の志を一貫して保つという考え方もありますが、考えが変わったときに、自分と社会との距離感を見直すことも必要なのではないでしょうか。