終身雇用制度が終わりを迎えつつある現代において、自分の理想を叶えるための手段として転職がポジティブに受け止められる機会が増えている。一方で転職はキャリアアップとセットで語られることが多く、向こう見ずな退職についてはいまだネガティブなイメージも根強い。

 しかし、『仕事のモヤモヤに効くキャリアブレイクという選択肢 次決めずに辞めてもうまくいく人生戦略』(KADOKAWA)の著者である北野貴大氏は、「次を決めずに辞めちゃダメ」という言葉は思い込みに過ぎないという。ここでは、500人の離職経験者の本音を聞いた同書の一部を抜粋。離職がよい転機になったケースを紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)

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心の声を聞き、声の通りに動いてみたら…

 離職するときに、目的や方向性を持たずに辞める人も多くいます。その人たちが安易に無計画な訳ではなく、あえて決めすぎないようにしたことで、良い転機になったケースがあります。そういった人は、無計画でありながらも、自分の心の声を聞き、その声の通りにパワーや時間をそそぎ動いていく。そんな活動を通して、エネルギーを高めていき、その高まりの方向に転職していきます。

 人材コンサルの会社に新卒で入社し、2年目で次を決めずに離職したえつこさんは、「何かやりたいことが明確にあって辞めた訳ではありませんでした。言語化はできないけど、思い描きたい未来にもっと近づきたくて、そのためには、仕事から離れるという手段が当時の自分には必要でした」と辞めたときの心境を振り返ります。

 せっかく新卒で入った会社だったので、離職する決断もなかなかできずにいましたが、「辞めよう」と心の底から動ける感覚が舞い降りてきたタイミングで、離職したそうです。自分自身で主体的に転機をつくろうと一念発起し離職したため、初めは「何かしなきゃ!」という気持ちが強く、オンラインのキャリアスクールに入ってスキルを学んでみたり、住む場所を変えて、ゲストハウスの住み込みスタッフとして働いたり、その他、いろんな人に会ったりしたそうです。そんな生活を続けていると仕事を辞めたはずなのに、なぜか忙しくなってしまい、予定をこなすので精一杯になってしまっていました。

 そんな中、学生時代にした原付きバイク旅の楽しさを思い出して、「またしたい!」と思い立ち、四国一周スーパーカブの旅に出ました。社会人になると何事も目的や成果、やる理由などが求められがちです。一方で「この旅で感じた心の底からのワクワクや感動は、言葉にするのは難しいですが、とても豊かで、人間らしさを感じた出来事でした」と振り返ります。