2023年でデビュー45周年を迎えた今野敏さん。46年目の作家生活と、これからの「公安外事・倉島警部補」シリーズについてお話を伺いました。
――45周年、おめでとうございます! これまでを振り返って、いかがでしょうか。
今野 “流行作家になる”というのが、俺にとっての目標だったんですね。「流行作家って何?」と聞かれると困っちゃいますが(笑)、デビュー前は毎日締切に追われて、毎日銀座で飲み歩ける作家がかっこいいなと思っていました。
――見事にどちらも達成されていますね。締切は月に5、6本抱えていらっしゃるとか。
今野 2005年に『隠蔽捜査』が話題になってから、一気に忙しくなりました。ピークは08年。当時は月8本の締切があって、さすがに体を壊してしまったんです。それからは今のペースで、月5本。年に5冊の新刊が出ています。
デビュー前に憧れていたとはいえ、実際にやってみると、締切を抱える生活は楽しいものじゃない(笑)。ただ、そのタスクが生活にないと、毎日がつまらないとも思う。もう何年もやっていますから慣れもありますね。
――とはいえ、過酷な執筆スケジュールです。どうやって乗り越えていらっしゃるんでしょうか。
今野 何よりも、技術ですね。趣味の模型作りと同じように、「この先どうしたらつながるんだ?」と迷っても、手だけは止めない。ルーティーンのようなもので、毎日同じペースで続けることが一番重要です。言ってしまえば、自分のスタイルを確立できないと、小説家という仕事は大変かもしれない。
俺は手を動かす職人の道を選びましたが、長い時間をかけて一冊書くスタイルの作家もいます。その点、作品への熱量において、2人だけどうしても敵わない同業者がいるんです。それが、夢枕獏さんと佐藤究。羨ましいほど、作品への情熱があります。どちらの道を行くかは、選択の問題ですね。