多くの企業では、「世代間ギャップ」「コミュニケーション・ギャップ」を埋めるために、「1on1ミーティング」がなされている。しかし、「1on1ミーティング」実施後に何も言わずに辞めていく若者が増えているという。今の職場の若者は、いったい何を考えているのか?

 ここでは、金沢大学の教授・金間大介氏の著書『静かに退職する若者たち 部下との1on1の前に知っておいてほしいこと』(PHP研究所)より一部を抜粋して紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)

写真はイメージです ©アフロ

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「人の気持ちを誘導する」のは傲慢

 モチベーションを研究している人間がこんなことを言うのは矛盾しているように感じられるかもしれないが——。

 今の人材育成論の多くは、若者たちの気質、性格、人柄に及んでいる。言動ではなく、むしろその背景にある心理的気質に向かっている。

 理由は、彼らの言動が不可解で、理解できず、場合によっては上司や先輩である自分自身あるいは会社にとって、不利益になる可能性があるからだ。だから戸惑う。できれば何とかしたい。

 ここまではよくわかる。

 問題はここからだ。

人の心理的気質は言い方や環境で変わらない

 いかに彼らの言動が不可解で、理解できず、自分にとって不利益になる可能性があるからといって、彼らの心理を変えようとする行為はよくない。

 というか、そんなことをしても意味はない。

 自分の利益は決して損なわないようにした上で、接し方を変えてみたり、言い方を変えてみたり、環境を変えてみたり。そうやって若者を誘導しようとしても、意味はないのだ。人の心理的気質はそんなことで変わったりしない。

 もう一度言おう。

 人材育成という名の下に人の気持ちを誘導しようなんて、ちょっとひどくないか。

 では、どうしたらいいのか。

 以降で、現時点で僕が考える5個の提案をしていきたい。あくまで仮説の段階だが、少しでも思考のヒントになれば幸いだ。