カリブ海の小さな島ジャマイカで生まれたレゲエ・ミュージックは、ロック界に大きな衝撃を与え、クラプトンやストーンズ等様々なミュージシャンに多大な影響を与えた。その大スター、ジミー・クリフの絶頂期ライブ・ツアーを追った傑作音楽ドキュメンタリーは、いまの日本にこそ必要だ! 音楽を愛するジャーナリスト・相澤冬樹が熱くリコメンドする!
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俺たちの音楽は世界中のミュージシャンに影響を与えたんだ。レゲエだよ。ジャマイカ生まれの“反逆の音楽”さ。なに? 『ワン・ラヴ』や『ノー・ウーマン・ノー・クライ』なら知ってるって? そりゃあレゲエの神様、ボブ・マーリー兄貴の代表作だから俺もリスペクトしてるけどさ、ほかにもいい曲あるだろ? ほら、『ハーダー・ゼイ・カム』とかさ。
この連載2回目でローリング・ストーンズの創設者、ブライアン・ジョーンズについて書いたところ、かなり読まれたという。そこで担当編集者から、次も音楽ドキュメンタリーはどうかと提案があった。3月公開では、“3大ギタリスト”の一人、エリック・クラプトンと、レゲエの“生ける伝説”、ジミー・クリフの映画があるという。私は迷わず答えた。
「ジミー・クリフ 、いいですね」
レゲエの根底にある政治家や国家権力への不信
レゲエは政治だ。映画は冒頭から不穏な空気を漂わせる。カリブ海の島国ジャマイカ、1980年。総選挙を前に政争が激しさを増していた。不安をかきたてるサイレンの響き。黒煙を噴き燃え上がる石油タンク。炎の前で「欲をかく者はすべてを失う」と歌うジミー。その歌声にかぶせるように演奏が始まる。根底には政治家や国家権力への不信がある。
「奴らが俺らを抑圧するほど、結局奴らが滅びていくんだ」(代表曲『ハーダー・ゼイ・カム』)
「自由こそ魂の求めるもの。立ち上がれ、抵抗するんだ。魂の自由のために」(『ファンダメンタル・レゲエ』演奏後のMC)
「テーブルをくつがえせ、俺たちならできる。行動を起こせ、必ずできる。俺たちの手でひっくり返せ」(『レッツ・ターン・ザ・テーブル』)