3月11日、第96回アカデミー賞において宮﨑駿監督「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞を受賞。受賞直後、スタジオジブリの第1スタジオで、鈴木敏夫プロデューサーによる記者会見が開かれました。文藝春秋ウェビナー「鈴木敏夫はどう生きるか」にも出演してくださった鈴木さん。約60分に及んだ記者会見の模様をお伝えします。中にはファン騒然の爆弾発言も……。

◆◆◆

「日本男児として嬉しい顔は見せちゃいけない」

鈴木敏夫プロデューサー ©2023 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

 鈴木 朝早くから皆さんご苦労さまです。なんか目が痛い(笑)。オスカー像ってね、あれ、1個もらえるじゃないですか。そしたら実は、何個も注文すれば、お金を出せば作ってくれるんですよね。さっき3個注文しました。どうもありがとうございました! 

 ——本日はおめでとうございます。この「勝因」をどう考えているかっていうことと、あとは宮﨑監督の反応は?

ADVERTISEMENT

 鈴木 宮﨑はね、さっきまでちょっと喋ってたんですけれど、「日本男児として嬉しい顔は見せちゃいけない」って言いつつ、なんか(笑顔が)零れてたんですよね(笑)。本当に心の底から喜んでましたね。みんなも応援してくれてるし。それが1つ。それと、「勝因」って、言われてもね(笑)。選んでいただく基準があるんだろうから、そこらへんが僕らにはわからないんで、ただただアカデミー協会の会員の方に感謝するだけです、はい!

 ——米国でかなり評価が高かった。どのへんがアメリカ人の心をつかんだといったイメージというのは?

 鈴木 僕ねえ……実は、日本のお客さんよりもアメリカのほうが、実はすんなり受け入れやすかった、っていう気がしているんですよ。で、僕はそばにいましたから、彼(宮﨑監督)が何をやっているのかってなんとなくわかっていたんですけれど。ある種ね、聖書なんですよね、内容が。映画の公開中、あんまり言わないようにしてきたんですけれど、内容が聖書の最後のほう、つまり「黙示録」。「宮﨑駿の黙示録だ」って思ったんです。そりゃあねえ、映像を見ていくとわかるんですよ。それは、アメリカの人には受け入れやすかったんじゃないかな。そんなふうに思っています。

 ——今回で2回目(のアカデミー賞受賞)ということですけども、受賞が発表されたときには具体的にどういうお気持ちでしたか?

 鈴木 いやあ、(オスカー像を)3個注文してたんで(笑)。「獲れましたよ!」って言われて、「あ、そう」っていう感じで慌てふためいてたんですけども。でも、これは時の運だと思っていますから、こういう賞をいただけたっていう、こういう瞬間、やっぱり、本当に心の底から嬉しかったんですよね。それ以上、言いようがありません。はい。

 ——受賞のときは宮﨑監督と一緒に?

 鈴木 いや、アトリエがこのそばにありまして、そこで彼はね、待ち構えていました。で、僕はこっちのスタジオのほうにいたんですよ。で、この記者会見がその後にありましたからね。だから、まあ僕が彼と話をしたのは、電話です。

 ——そのときには、「日本男児として嬉しい顔を見せてはいけない」と言いながらも喜びがこぼれていたみたいな?

 鈴木 それはね、その前なんですよ。僕が「じゃ、スタジオ行ってきます」っていうときに「頑張ってください」なんて言ってましたからね。そういうことです。

3月11日朝8時半すぎ、アカデミー賞受賞の瞬間に沸き立つジブリスタッフのみなさん Ⓒ文藝春秋

 ——受賞のときは、どのようなことを鈴木さんのほうにおっしゃったんでしょうか。

 鈴木 いやぁ、まあ興奮してましたよね。「俺は気にしてないから」って、僕がこっちに来る前も、一生懸命自分の気持ちを抑えるようにそういう言い方をしてましたけども、けっこう欲しがらないって言いながらも欲しいんだな、っていう感じでした(笑)。はい。