大好評だったオンライン番組「アニメの戦争と兵器」(5月17日配信)を完全テキスト化。東京大学専任講師の小泉悠さんと、防衛研究所防衛政策研究室長の高橋杉雄さん、朝日新聞記者の太田啓之さんという、カタい肩書の3人が内に秘めていた“ミリタリー愛”、“アニメ愛”をぶちまけた、2時間あまりの熱いトークを書き起こしたら2万4千字になりました。「文藝春秋 電子版」に掲載されたフルテキスト版の一部を、部分転載します。
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「やっぱり『ヤマト2199』の三段空母です」
――今日は太田さん、高橋さんがいろいろな資料を持ってきてくれていますので、最初に太田さんがお持ちいただいたプラモデルの紹介をお願いできるでしょうか。
太田 まず今日のメインの話のひとつになるだろう『機動警察パトレイバー2 the Movie』に出てくるF-16改ナイトファルコンとF-15改イーグルプラス。それから『戦闘妖精雪風』のスーパーシルフィード、『超時空要塞マクロス』のストライクバルキリー。これは『機動戦士ガンダム サンダーボルト』に登場したサイコ・ザクです。そしてこれは『宇宙戦艦ヤマト2199』に登場する三段空母バルグレイです。僕が自分でつくったものとか、友達につくってもらったりしたものを今日いろいろ持ってきました。
小泉 全部私物なわけですね。一番思い入れがあるのはどれなんですか?
太田 やっぱり『ヤマト2199』の三段空母です。僕は『宇宙戦艦ヤマト』が原点だから。このキットもつくり手であるバンダイSPIRITSの執念が入っています。
高橋 これ、戦闘機と空母の縮尺がアニメとちがいますよね。映像だともうちょっと飛行機が大きかった気がする。
太田 そうかもしれない。いちおう三段空母のキットは劇中に登場した3つとも買ってあるけど、ひとつ作ったところで力尽きました。
小泉 社会人をしながらプラモデルつくる時間はなかなかとれないですよね。高橋さんは趣味でプラモデルをつくりますか?
高橋 僕はあまりアニメのプラモデルはつくらない人。つくるとすれば、バルキリーのファイター形態だけ。
小泉 そうなんだ(笑)。
高橋 デフォルメされてるとつくり物っぽく感じちゃうのがちょっとね。
小泉 僕はアニメプラモは全然つくらないんですよ。700分の1の帝国海軍艦艇とか、72分の1の飛行機をちまちまつくって並べて悦に浸っている。
高橋 え、戦車じゃないの?
小泉 小学生のころに七四式戦車のプラモをつくったことがあるだけですね。なぜか戦車にはあまり惹かれなかった。今でも自分のことを戦車オタクとは言わないですね。
高橋 ロシア軍やソ連軍と言ったら戦車じゃないですか。
小泉 大体のソ連軍オタクは戦車大好きですね。T-34とかT-72とか。僕はSu-27シリーズだったら全部網羅してます。ちなみに『ヤマト2199』の三段空母は軍艦オタク的に見ると初期赤城をリスペクトしているように見える。初期の赤城は三段式になっているから。でもこれは上にもう1個甲板があるから四段ですよね。縮尺は何分の1の設定なんですか?
太田 1000分の1ですね。統一スケールで出たから、ヤマトはけっこう小さいんですよ。
小泉 1974年に放映されたオリジナルのヤマトは、実物の大和を掘り起こして宇宙戦艦に改造したという設定だから。
太田 やばい。こんな話ばかりしていていいんだろうか(笑)。
小泉 こういう話をするための回ですから(笑)。