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「『パトレイバー2』は93年。カンボジアPKOのときですよ」

 高橋 一方でアメリカのセンチュリーシリーズの数の多さというのもあるよね。

 小泉 ぼくこの前ハワイでアビエーションミュージアムに行ったら、F-105サンダーチーフがあって、まじまじと見ていたらめちゃくちゃソ連機っぽいと思ったんですよ。

 高橋 ああ、わかる気がする。

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 小泉 センチュリーシリーズは迷走もあったけど、あの時代としては信じられないテクノロジーを詰め込んだものなのでシュッとしている。後々調べてみたら、F-105の主任設計官ってグルジア人なんですよ。いまはジョージアですけど。移民したジョージア人なんです。

 太田 サンダーチーフ(F-105の愛称)はベトナム戦争でもっとも酷使された戦闘機ですよね。一番たくさん爆撃していて、一番たくさん落とされている。でもやっぱりかっこいいですね。

 小泉 F-105は遠くから見るとものすごく流麗な飛行機に見えるんですよ。

 高橋 『エリア88』でグエンが死ぬ場面が非常に記憶に残ってる。

 太田 グエンはベトナム人ですよね。

 小泉 そういう文脈でF-105に乗らせているんだ。

 太田 新谷かおるさんはその辺よくわかってるから。

 太田 『機動警察パトレイバー2 the Movie』は何年公開でしたか?

 高橋 『パト2』は93年。カンボジアPKOのときですよ。

 太田 そうかあ。

 小泉 今日ここにあるF-16のプラモを(手に取って掲げて)このアングルで見ると劇中の会話を思い出しますね。「そしてここからが本題ですが、自衛隊はこのタイプのF-16を装備していない」

 高橋 「あんまり詳しくないんですが、放映された例のビデオの奴とは形が違うような」

 小泉 「歌いますか?」って(笑)。高橋さんが今日お持ちいただいたレーザーディスクについてくる解説書には、軍事オタクがみんな大好きな、幻の航空機インターセプト場面の会話が全部載ってるんですよね。

 太田 自衛隊の防衛システムがハッキングされてしまい、実際には飛んでいない飛行機が東京の上空に侵入しつつあるという偽の状況が観測されて、自衛隊のF-15改がスクランブルするという非常に緊迫したシーンですね。この場面の会話を小泉さんは空で全部言えるんですよね(笑)。

劇場版『パトレイバー2』の衝撃を語る小泉悠さん

 小泉 言えるんですけど、前ね、空自の人たちと飲みに行ったときに、ぼくが酔っ払ってこの話を始めたら、実はその場にいた人たちがほとんどGCI出身だったと(笑)。「やってみせてよ」と言われたからやってみせたら、「うちはそうは言わないかな」と言われて針の筵みたいになった(笑)。あとこの場面でぼくがほんと天才だなと思うのは、東京コントロールが民間機を「全部大阪にまわせ」って言うところ。なるほど、東京上空であんな事件が始まったら民間機の避難もあるよねと。

 高橋 しかも自衛隊からの連絡じゃなくて、民間が自前のレーダーで気づいてやっているんですよね。

 小泉 そうそう。あのシーンは「なるほど、戦争っぽい!」と思ってしびれましたね。

本稿のフルテキスト版、および元になったオンライン番組は「文藝春秋 電子版」でご覧いただけます。