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一騎打ちを制した『君たちはどう生きるか』

  長編アニメーション部門の受賞作は『君たちはどう生きるか』で、これまた英語ではない作品。ここでも、『ウィッシュ』や『ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック!』などハリウッドのメジャースタジオ作品を制して、スペイン/フランス合作の手描きアニメ『ロボット・ドリームズ』が入っている。これもまたすばらしい映画なのだが、この部門は『君たち~』と、メジャースタジオ作品『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の一騎打ちだった。オスカーと投票者がかぶる賞を見てみると、『君たち~』は英国アカデミー賞を、『スパイダーマン~』はアニー賞と、オスカー予測上非常に重視されるプロデューサー組合賞を押さえていて、ギリギリまで拮抗。しかし、ここでもまた、近年増えた北米外の投票者のテイストがより反映されてか、全世界規模で尊敬を集めてきた宮崎氏が勝つことになった。

 日本の作品では、もうひとつヴィム・ヴェンダース監督、役所広司主演の『PERFECT DAYS』が国際長編映画部門にノミネートされていたが、受賞したのは『関心領域』。この映画は作品、監督、脚色、音響部門にも食い込んでおり、少なくともここを押さえるであろうことは明白だった。ヴェンダース監督も、授賞式前日に現地で開かれた記者会見で、「私たちの馬は先頭を走ってはいない。多くの人はほかの馬に賭けている。私は、私たちの馬はとても良いと思っているが」と、自分の作品が最有力ではないことを認めている。

『ゴジラ-1.0』で視覚効果賞受賞の山崎貴監督と『オッペンハイマー』で監督賞受賞のクリストファー・ノーラン © AFP=時事

思い出に残る受賞スピーチ

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 授賞式そのものも、2年前の平手打ちや、7年前の封筒取り違えのようなアクシデントのない、安定の展開。そんな中にも、思い出に残る受賞スピーチはいくつかあった。たとえば、ランドルフ。これまでの授賞式でずっと事前に書いたものを読んできた彼女が、初めて紙に頼らずに「私はずっと自分でないものになろうとしてきました。今、私は、自分らしくあるべきなのだと気づきました」と涙声で語ったのは、新鮮だった。