たしかにアーティストにとって、デビュー曲は“名刺”のような意味を持ちます。
2018年にリリースされたKing & Princeの『シンデレラガール』のMVには、花びら舞う王宮で踊る6人が、門限を気にする恋人を切なく思う情景が描かれています。憂いを帯びた瞳で彼女が残したガラスの靴を見つめ、「きみを守り続ける」と誓う彼らは凜々しくて“求められる姫君”の気分を存分に味わえました。
これに対しNumber_iの『GOAT』のMVでは、冒頭から「What is Number_i?」という問いかけがなされ、カメラに向けて平野紫耀さんが「俺らについてくりゃ見せてやるNew World」と挑発的に歌い上げます。
場面はめまぐるしく切り替わり、摩天楼に、夜のスーパーに、偉そうな人が集う会談のテーブルに……平野さん、神宮寺さん、岸さんが神出鬼没に現れて、どんな場所も“彼らのステージ”に変えていくのです。
魅力的な悪夢のような中毒性があり、こちらはウサギを追って不思議の国に落ちるアリスになった気になります。“帽子屋”みたいな平野さんのハット、チェス盤を思わせる格子柄のスーツ、どことなくウサギっぽく見える神宮寺さんの帽子など、アリスを連想させるモチーフもちりばめられ、「求められる姫君から楽しく追うアリスへ!」というメッセージを読み取れるようにも思います。
Aさんが膝を叩いたのは、こうした明確な変化が胸に響いたからでしょう。
「おおー、こういうのがやりたかったわけか!」
Bさんはキンプリの分裂を惜しみながらも、Number_iの3人がテレビから消えることなく活動できていることに安堵していると話します。
「“おおー、こういうのがやりたかったわけか! カッコイイっすね!”というのが、『GOAT』のMVを観た素直な感想です。思い切りやりたいことをやれている、みたいなイメージで、たしかにこれは以前の形ではできなかったのかも……。
もちろん、5人になってからのバランスも好きだったので、もったいないなーという思いも正直あります。 ただ、退所して消えてしまうのを心配していたのですが、Number_iのメンバーはCMでも見かけるしほっとしています。テレビの露出が多ければ多いほどよい、みたいな時代でもないですし、男性グループの新しい在りかたを示してくれそうな期待感があります」