約束の時間を間違える。メモを取らないとすぐ忘れてしまう。疲れやすくて頑張りがきかない。だるくてつい寝てしまう。以前はふつうにこなしていた仕事ができなくなる。こうしたミスに身に覚えがないだろうか。これらの症状を「能力減退症」と名づけて警鐘を鳴らす三田茂医師に、病いを解説していただいた。

「能力減退症」とはどのような病いか?

 2011年ころから、医院に訪れる患者さんに疲れやすくてだるい、記憶力が落ちるという症状を訴える人が見られるようになりました。共通するのは、考えたり、覚えたりすることが億劫になり、ミスを連発するようになることです。体力もだんだんとなくなって、以前なら、ふつうにできていたことができなくなります。

 こうした症状に加えて、ただの風邪がいつまでたっても治らなかったり、持病が悪化したりすることも見られます。たとえば、喘息やアレルギーを持っていて、これまでは薬でコントロールできていたけれど、ひどくなったままなかなか治りません。病院に行っても、きちんとした診断がつかないのですが、身体全般の能力が落ちているのではないか、と考えています。

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 働く世代ですと、仕事が進まず、疲労感がなかなか抜けず、休まざるを得なくなります。大人でもたいへんですが、小さな子どもたちにもこの症状がよく見られ、注意深く観察してきました。その後、患者さんの数が2016年を節目に急激にふえたことと、症状がいっそう重くなったことで危機感を持つようになりました。

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 これまでふつうに出来ていたことができなくなる。子どもなら、発達がだんだんゆるやかになり、停滞してくるというように、身体のあらゆる面が衰えてくることから「能力減退症」と名づけました。次ページにおもな症状を一覧にしました。