1ページ目から読む
2/2ページ目

歩き過ぎにも注意

 ところで、便秘に限らず歩くことが健康にいいのは言うまでもない。1日平均8000歩から1万歩が、病気予防に最も効果的とされている。ただし、歩き過ぎも禁物だ。戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝医師が話す。

「高血圧や糖尿病を改善するために、内科医に言われて1日1万歩も2万歩も歩く人がいます。しかし、それでひざを傷める人がたくさんいます。ですから、ひざを守るためにも、歩き過ぎにはくれぐれも注意をしてください」

 ひざの痛みのため整形外科でMRI検査を受けると、半月板損傷が見つかるかもしれない。しかし、その場合も、あわてないようにしてほしい。

ADVERTISEMENT

「実は、半月板は年齢の変化で自然に割れます。ひざが痛くなくても50歳以上の人だと半数に半月板損傷が見つかるのです。にもかかわらず、手術をすすめる医師がいますが、半月板を摘出しても、残った半月板が割れたり、軟骨がすり減りやすくなったりして、また痛みの出ることが少なくないのです」(同前)

 すると、今度は「人工関節にしましょう」と言われる可能性がある。だが、実はひざの痛みの9割は、手術をしなくても治ると戸田医師は断言する。

「ひざを守るために大切なのは、太ももの筋肉を鍛えることです。ひざに痛み止めの注射を打って痛みが和らいでいるうちに、スクワットなどをして筋肉を鍛えておくと効果的です」

©iStock.com

 なお、ひざ痛に悩む人の中には、軟骨の成分を補うとされるグルコサミンやコンドロイチンのサプリメントを飲んでいる人がいるかもしれない。だが、これらの効果は多くの研究で否定されている。グルコサミンやコンドロイチンを飲んでも胃腸で分解されてしまうので、それらの成分がそのままひざの軟骨に届くわけではないからだ。

痛いから動かさない、は悪循環を生む

 痛みと言えば、腰痛の常識も変わりつつある。ぎっくり腰を起こして、痛みがとれるまで安静にするよう医師から言われた人がいるかもしれない。しかし、それも間違いだ。戸田医師が解説する。

「腰が痛いからと言って動かさないでいると、背骨まわりの筋肉がやせて柔軟性がなくなるため、動かすと余計に痛みを感じやすくなる悪循環に陥ります。この痛みの悪循環を断ち切るためにも、安静を続けるのではなく、早めに体を動かしたほうがいいのです」

 

 なお、腰痛で病院にかかると、念のためMRIを撮るようすすめられるかもしれない。しかし、強い神経症状があるような場合を除き、腰痛のMRI検査は原則的に無駄なので受けないほうがいい。

「腰のMRIを撮ると神経痛の症状のない人でも、60歳以上では6割近くの人に神経を圧迫する所見が見つかるという研究があります。逆に言うと、MRIで異常が見つかったとしても、それが腰痛の原因かどうかはわからないのです。意味がないのにMRIを撮ることは、医療費の無駄遣いです」(同前)

 ところで、腰痛を防ぐにはどうすればいいだろう。戸田医師がおすすめするのが「よっこらしょ」とかけ声を出すことだ。

「台から立ち上がるときの筋肉の働き方を調べた研究があります。それによると、声を出さなかった場合に比べて、声を出したときのほうが背筋、太もも、すねの前の筋肉が協調して、同時に働いていました。つまり、かけ声を出したほうが、腰の筋肉の負担が減るのです。なので、椅子から立ち上がるときや、重いものを持ち上げるときは、いい格好して無言でやらずに、『よっこらしょ』と声を出してください

©iStock.com

 健康を維持する智慧は、意外に身近なところにある。読者のみなさんもぜひ実践してみてほしい。

(初出『週刊文春』2017年1月5・12日号)