フジテレビ「SMAP×SMAP」をはじめ、数々のバラエティやドラマを世に送り出してきた放送作家の鈴木おさむさん(51)。今年3月末で、32年間続けた放送作家業を引退する予定だ。
そんな鈴木さんが、テレビの真実とヒット番組の裏側、そしてテレビへの提言を綴った『最後のテレビ論』(文藝春秋)を上梓した。ここでは、同書より一部を抜粋。今年1月期に放送したドラマ「離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―」(テレビ朝日系)のキャスティングの裏側を紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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脚本を手がけたドラマがヒットしやすい時とは?
これまでの放送作家人生32年の中で、おかげさまで連続ドラマの脚本に挑戦させて頂くチャンスが何度かあったが、正直、苦手意識は否めなかった。
2017年、テレビ朝日「奪い愛、冬」というドラマはドロドロ不倫ドラマだったのだが、その作品で初めて自分のドラマの世界観が「開眼」した気がした。水野美紀さんは怪演女優の芽を出し始めていた。そのドラマでは、夫が不倫して狂っていく、中々あり得ない濃すぎるキャラを見事に演じてくれた。水野美紀さんのおかげで、僕が書くべきドラマの方向性が見えたと言っても過言ではない。本当に感謝しています。
自分のドラマは、女優さんが今までやったことのない役を振りきって演じてくれた時に、ヒットしやすいのではないかと気づけた。
「離婚しない男」は伊藤淳史さん以外のキャストが決まっていなかった
そして、2024年1月に始まったテレビ朝日のドラマ「離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―」。これは美人妻の綾香に浮気された夫・渉が娘の親権を取り離婚しようと奮闘する漫画原作をもとに、僕が脚本を書いた。
23年の夏頃、テレビ朝日の服部宣之さんからオファーを受けた。服部さんは、元々東海テレビで昼ドラを作っていた。あの名作「牡丹と薔薇」も。その後、テレビ朝日に入るわけだが、僕は浜崎あゆみさんの自伝的小説を元にしたドラマ「M 愛すべき人がいて」で初めて一緒に作らせていただいた。
大映ドラマを敬愛する僕の、キャラ濃すぎで変なことばかり起こる世界観をさらにぶっ飛ばしてくれたおかげで「M」はヒットした。
服部さんは、僕に「離婚しない男」の原作を渡して、この主人公を伊藤淳史さんでやりたいと言ってきた。奥さんに浮気されまくる「サレ夫」がかなり似合うのではないかと。
それ以外のキャストは決まっていなかった。