3月19日、20日、日本と「南太平洋の島嶼国」14か国の国防相による多国間会合が東京で開催される。今年7月には東京で首脳級の「太平洋・島サミット」も開催される予定だ。

 南太平洋地域では近年、「中国支配」が急速に拡大している。その結果、「台湾との断交」に踏み切り、長年続けてきた「日米台との友好関係」を捨てて「中国との友好関係」に切り替える島嶼国が続出している。

 この動きに危機感を覚える日米は、豪州とも連携しながら「自由で開かれたインド太平洋」を維持すべく島嶼国との関係強化を図っているが、「中国の攻勢」に押されている。

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元知事が亡命生活を余儀なくされた

 2月12日には、「太平洋・島サミット」の中間閣僚会合がフィジーで開催され(日本の上川外相は共同議長として参加)、中国を念頭に、「力または威圧による一方的な現状変更の試み」に反対する議長声明を発表したが、外相の参加は日本を除き6カ国にとどまった。

 かつて日米が激戦を繰り広げたガダルカナル島のあるソロモン諸島では、とくに「中国支配」が際立っている。中国は、露骨にカネに物を言わせて、政治家を買収し、中国企業の進出を促し、治安維持のための装備や警察官まで“輸出”しているのだ。2022年には安全保障協定を締結したが、その中身は公開されていない。

 実は昨年10月、ソロモン諸島における「中国支配」の現状を訴えるために、同国マライタ州の知事だったダニエル・スイダニ氏が来日していた。中国に買収された議員が多数を占める議会での不信任議決で失職し、事実上の亡命生活を余儀なくされていた最中でのことだ。

昨年来日した際のスイダニ氏とタリフィル氏 ©早川理恵子氏

 日本滞在中、「文藝春秋 電子版」のオンライン番組に緊急生出演を果たし、インド太平洋研究者の早川理恵子氏、中国や台湾情勢を長年取材してきたジャーナリストの福島香織氏と、ソロモン諸島の深刻な現状をめぐって徹底議論した。

「チャイナマネーを拒んで中国に狙われた男」スイダニ氏の証言は、「南太平洋で進む中国支配」を知る上で第一級の資料だ。今回、「文藝春秋 電子版」では、その証言を記事化し、一挙公開する。

台湾と断交し、中国との国交を樹立

〈福島 2019年にソロモン諸島のマナセ・ソガバレ首相が率いる政権が、長年外交関係のあった台湾と断交し、中国と国交を樹立しました。そのことで、親中国派の政治家たちと、スイダニさんを始めとする親台湾派の政治家が対立する格好になった。そして2023年2月には、同国のマライタ州議会で不信任決議案が可決され、スイダニさんは州知事の立場を失うのですが、背後にはソロモン諸島の現政権による工作があったと見られています。