北朝鮮を訪れるロシア人観光客の数が激減したと、米政府系放送局「自由アジア放送(RFA)」が伝えた。ロシア・沿海州政府の肝いりで2月から始まった北朝鮮団体観光。北朝鮮が外国人観光客を受け入れるのは2020年1月に国境を閉鎖して以来、約4年ぶりだ。2月の最初のツアーは定員100人のところ、ほぼ満員の98人が参加した。ところが、3月に2回、それぞれ定員100人で募集した観光には、それぞれ48人と14人しかツアー客が集まらなかった。RFAは「北朝鮮の度を過ぎた規制が原因だろう」と報じた。

金正恩氏 ©朝鮮通信=時事

不自由すぎるツアー内容

 確かに、北朝鮮観光は、世界各地と比べてみても、ものすごく不自由なことこの上ない。北朝鮮観光を主催したロシア・ウラジオストクの旅行社「ボストーク・イントゥール」がツアー客に配布した注意書き「朝鮮民主主義人民共和国に渡航する観光客のための覚書」をみると、その不自由ぶりが浮かび上がる。

 注意書きはまず、「自宅に置いて来るもの(=北朝鮮に持ってきてはいけないもの)」として、北朝鮮の観光ガイドブックを挙げている。注意書きによれば、北朝鮮は2015年以降、外部から入ってくる書籍の監視を強化している。北朝鮮の観光ガイドブックが空港の税関検査で没収されるケースが何度も発生しているという。ドイツの駐北朝鮮大使を務めたトマス・シェーファー氏によれば、北朝鮮では2013年12月に金正恩総書記(当時、第1書記)の叔父、張成沢国防副委員長が処刑されて以降、国内統制強化と対米強硬路線を唱える強硬派が主導権を握った。西欧文化の取り締まりもこのころから厳しくなった。

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「今の時代、紙のガイドブックなんて古い。スマホがあれば、何でも検索できる」と考えてしまうかもしれない。でも、北朝鮮ではそうもいかない。注意書きはこう説明する。「ホテルやその他の施設にはWi-Fiネットワークはありません」。ホテルにはインターネットに接続されたパソコンがあり、1週間前に申し込めば使えるという。

 ただ、メールはホテルのアカウントからしか送受信できない。メールの受信は無料だが、送信する場合は1本あたり2.2ドル(約330円)かかり、容量が大きい添付ファイルがあると追加料金も取られる。北朝鮮はローミングサービスがないため、SIMカードを購入しないと通話もできない。195分の通話が可能だが、120ドル(約1万8000円)もするSIMカードを購入しても、北朝鮮市民の携帯に電話はかけられない。