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なるほど納得! 「口中調味」という日本独特の食べ方文化を最大限生かした、素晴らしい手法だ。

目をつぶって視覚情報を遮断することによって、味覚が研ぎ澄まされ、味わうことに集中できるのだ。

そういえば、出張である女子刑務所を訪れたとき、素晴らしい技を見かけた。

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コッペパンを片手に持ち、その側面に箸をプスプスと等間隔に突き刺して切り取り線を入れ、そこからパカッときれいに割って、サンド用のコッペパンにして具を挟んでいた。

見た目などどうでもいい男子に比べて、女子は美しく食べたいのだと感じた。

刑務所で取り入れた「イカフライレモン風味」

刑務所で働き始め、私が初めて新しく取り入れたのがこのメニューだった。

実は前職の学校栄養士時代の給食からのパクリである。学校では材料にみりんも入れていたが、すでに説明したように刑務所では使えない。そんな事情から、刑務所用にレシピをアレンジしなければならなかった。

ちなみに学校給食でのメニュー名は、「イカフライのレモン煮」だった。

少しだけ表現を変えたのは、パクリという後ろめたさと、「煮」と言いながら実際には揚げてからタレをかけているので、「煮てないだろっ!」というつまらない反抗心から「煮」を「風味」に置き換えたのだ。

学校給食で人気ダントツ1位

ちなみにレモンだって業務用のレモン果汁を使っているため、果汁はわずか10パーセントの「なんちゃってレモン」である。

レモンといいながら実はあまりレモンではないという意味で、「レモン風味」という表現がちょうどよい。

さて、この「イカフライのレモン煮」は西尾市の学校給食が始まりで、愛知県内では何度もテレビで取材されているほど有名。同市内の学校給食でダントツ1位の人気を誇る。これが出る日は出席率がよい、と噂されるほど生徒を引き寄せるのだ。

なんでも過去には、給食時間の前に不良グループが配膳室に忍び込み、盗み食いした事件が発生したらしい。それ以来、配膳室は施錠されるようになったと聞いている(刑務所と同じやんか……)。