フランスでドラァグクイーンとして活躍するマダムワサビさん。もともとオペラ歌手になるために修行していたワサビさんはなぜ今のお仕事に? そして数少ない日本人のドラァグクイーンがフランスで働くことの苦労とは?(全2回の1回目/後編を読む)
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なぜ日本人が「フランスでドラァグクイーン」に?
――フランスのテレビ番組で、着物姿で「もののけ姫」を歌われているのを拝見しました。素晴らしい歌声でした!
マダムワサビさん(以下、ワサビ) ありがとうございます。日本の音楽大学の声楽科出身で、大学卒業後すぐにイギリスに留学しました。留学を終えて帰国してからはオペラ歌手の卵として活動していましたが、30歳を目前にもう一度勉強したくてパリにやってきました。現在は音楽院を修了して、フリーランスのドラァグクイーンをしています。
――日本でいう新宿2丁目のようなところでショーにご出演されているんですか?
ワサビ そうですね。パリにはLGBTの集まる「マレ」という界隈があるんですよ。ショー以外にも、映画に出演したり、行政のイベントや、つい先日はパリにスタジオジブリのお店がオープンしたので、オープニングイベントに招待されたりとインフルエンサー的なお仕事もしています。
――女装やドラァグクイーンはずっと前からしていたんですか?
ワサビ 全くしていないです。ドラァグクイーンを始めたのはパリに来てからです。
――女装をしたり、したいと思ったことはそれまでありましたか?
ワサビ 中学生のころに演劇部の出し物で女装をしたことはありましたね。そのときはただ違う性を演じることや、まわりの子たちがおもしろがって笑ってくれるのが楽しかったです。
その次は大学卒業のときの謝恩会。女友だちのドレスを着て、ビンゴ大会の司会をしました。その後、友人の結婚式でディズニー映画『アラジン』のアラジンのコスプレをして、ジャスミン役の子とデュエットを歌ったんです。それから、別の友人の結婚式でアラジンじゃなくてジャスミンをやってみたら面白いんじゃないかということになって、衣装やヒールの一式を揃えてやってみました。それがすごく楽しくて! なんとなくそれっぽく動いてみたら、いわゆるオネェっぽくなりました(笑)。
――まわりの反応はいかがでしたか?