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「ドラァグクイーンを仕事だと思っていない人がいる」ノーギャラなのに出演依頼されたことも…フランス在住・日本人ドラァグクイーンが教えてくれた「差別」よりも“困ったこと”

マダムワサビインタビュー #1

2024/04/07

genre : ライフ, 社会

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ワサビ とても好評で、その年のハロウィンでジャスミンのコスプレをしたら、その動画が仲間内で広まって、4回ぐらい結婚式の余興に呼ばれました(笑)。

 このときはまだお遊び感覚で、化粧は女友達にやってもらって、男性がお笑いでするようなメイクでした。まわりに喜んでもらえるのがうれしかったですね。

楽しいだけじゃないドラァグクイーン業

――それ以来ずっと女装を?

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ワサビ いいえ。それが22歳ごろで、次は29歳でパリに来たとき。ジャスミンの動画も見せていた知り合いのドラァグクイーンのフランス人から誘われたんです。「今度主催のショーをするからドラァグクイーンの格好で出てくれない?」って。それで、2017年の秋にマダムワサビが誕生したというわけです。

――初めてのショーはいかがでしたか?

ワサビ ドラァグクイーンにはドラァグマザーと呼ばれる、お化粧やステージでの立ち居振る舞いを教えてくれる師匠みたいな存在がいるんです。私のドラァグマザーはアリスという子で、当日にメイクを教えてくれる約束になっていたのに、なぜかやって来るなり「また後でねー」と出て行ってしまったんです(笑)。結局、自分で見様見真似でメイクをしてなんとか舞台に立った思い出があります。

――ドラァグクイーンはどんなことが大変ですか?

ワサビ コルセット、ハイヒール、タッキングの3つが大変です! コルセットはウエストを締め付けるから苦しくて、その状態でお酒を飲むから体調を崩す子もいるぐらい。ハイヒールは、高さが15センチぐらい。私は身長が高くて、体つきもしっかりしているので、それで体重を支えて動くとなるとかなりきついですね。

 それとタッキング。ガムテープで股間を止めて、その上に下着をはくんです。そうするとトイレにも行けないし、慣れるまで気持ち悪いんですよ。私は男性バレエダンサーがはく、ダンスベルトというTバック状の下着をつけて、いつでもトイレに行けるようにしていますが、みんな大変ですね。そういう格好を長いときは6時間ぐらいしないといけません(笑)。

美しいパフォーマンスの裏には苦労もある(写真:本人提供)

――ドラァグクイーンやLGBTへの偏見を感じたりしますか?

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