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新生パルコのゲイバーは今…#MeToo時代にドラァグクイーンが求められる理由

「Campy! bar」ブルボンヌさん・家弓社長インタビュー

2020/09/25

 昨年11月に誕生した新生・「渋谷パルコ」の飲食店フロア“カオスキッチン”に、異彩を放つ店がオープンし、話題になったのを覚えているだろうか。

 その店とは、新宿2丁目の有名ミックスバー「Campy! bar」の渋谷店。ミックスバーとは、さまざまなセクシャリティの店員が在籍する老若男女歓迎のバーのことだ。その中でも「Campy! bar」は、多くのドラァグクイーン(派手な女性装をしてパフォーマンスをする人。主には男性)が在籍していることに特徴がある。

 新宿2丁目では一つの顔となっている「Campy! bar」も、渋谷パルコでは“カオス”の一つでしかなくなる。客層も変わり、果たす役割もきっと変わってくるのではないだろうか。

「新店オープン」以上の意味をもつチャレンジになぜ「Campy! bar」は踏み切ったのか。その思いから、近年のドラァグクイーンブームを、ドラァグクイーン自身はどう見ているのか。ドラァグクイーンとしてテレビや雑誌で活躍する、「Campy! bar」グループプロデューサーのブルボンヌさんと、「Campy! bar」を運営する、株式会社Campy代表取締役・家弓さんに聞いた。

※取材は2019年12月に行われましたが、新型コロナ流行で「Campy! bar」が一時休業していたため、このタイミングでの掲載になりました。

ブルボンヌさん(左)と家弓さん(右)

――「渋谷パルコ」に「Campy! bar」さんが出店すると聞いたときは、びっくりしました。決まったときは、どのような気持ちでしたか。

ブルボンヌ 日本で初めて同性パートナーシップが導入された渋谷区のプロジェクトでLGBTQのお店が入ってくるのは、ある意味、納得感がありますよね。そこに、うちのお店を選んでいただいたことはとっても嬉しい。

 しかも、フロアの名前が「カオスキッチン」。

――名前もぴったりですよね。

ブルボンヌ でしょう?「ちょっとインパクトあるキャラクターですけど、よろしくおねがいします」って店長のチカコ・リラックスたちと一緒にフロアを回ったんだけど、昆虫食を提供している「米とサーカス」さんでは、店長の方が虫の姿煮を出してくださって。

 それまでは「私たちは人間の根源欲求、性と食を広げる姉妹店だよお~」なんて言ってたんだけど、「いや、虫は……」って断っちゃいました。全然広げる気ないじゃねえか、っていうね。

ブルボンヌさん(奥)と聞き手の太田尚樹さん(手前)

――さっそくカオスな状況で最高です(笑)。「Campy! bar」さんは新宿2丁目の「入り口」、まさに「門」みたいなお店だと思っているんです。そんな「Campy! bar」さんの出発点を教えてください。

ブルボンヌ 1990年代後半に定期的に開催していた、「アッパーキャンプカフェ」っていうカフェイベントが前身なんです。

 今の「Campy! bar」の場所で、もともとはストレートの方が喫茶店を営んでいらっしゃったらしいの。でも、新宿2丁目がどんどんゲイの街になっていく中で営業が厳しくなったのか、閉店してしまったんですね。

 その後、『Badi』(注1)の版元である、テラ出版の平井孝社長がその場所を借りたんだけど、特にこれといって何かに使っているわけでもなく、中通りにあるのにいつも閉まっていた。当時『Badi』の編集部員だったので、せっかくだから月に1回だけ貸してくれないかって社長にお願いしたんです。それが始まり。

注1 『Badi』とは……1993年12月に創刊した男性同性愛者のための総合誌。2019年3月号で休刊。

街そのものがクローゼットを体現していた

――歴史を感じます。当時は、2丁目の様子も今とは大きく違ったでしょうね。

ブルボンヌ もう、まったく違いました。外の通りは閑散としているんだけど、雑居ビルの中のお店の扉を開けるとゲイたちがギュウギュウって感じ。まるで街そのものが、クローゼットを体現しているかのようだった。