世界中でブームの「脳トレ」すなわち“脳を鍛えるトレーニング”。知力アップのために、また認知症予防のために、取り組む人々は多い。しかし、実際の効果はどうなのだろうか。脳に関するあらゆる研究成果に目を通し、脳の健康に重要なことだけを完全網羅した話題書『世界の最新メソッドを医学博士が一冊にまとめた 最強脳のつくり方大全』(文藝春秋刊)が明らかにした、「脳トレ」効果について衝撃的な結論とは。
「脳トレ」ゲームは、本当に脳に効くのか?
2005年、ニンテンドーDS用のソフトが大ヒットとなりました。『東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のDSトレーニング』です。半年で100万本を売り上げ、子供からシニア層まで、空前の脳トレブームが日本に到来しました。
実はこういった「脳トレ」ゲームは、ほぼ同時期に世界中でブームとなっていたのです。今や「脳トレ」はすっかり社会に定着し、市場も拡大するばかり。今もスマートフォンのアプリストアには、無数の「脳トレパズル」「脳トレクイズ」が並んでいます。
では、この「脳トレ」ゲーム、本当に脳に効いているのでしょうか?
実は脳科学の世界でも、この「脳トレ」が効くか効かないか論争は、長年ホットな話題でありつづけています。著名な研究者が「効く」「効かない」で割れたこともあります。
ただ、脳科学の世界ではほぼ、結論は出ている、といっていいでしょう。2004年にケンブリッジ大学が主導して『ネイチャー』誌に掲載された大規模な研究や、2013年にノルウェー・オスロ大学で行われた23件の研究のメタ分析(複数研究をもとに、高次の分析を加えること)、2015年の米イリノイ大学の研究チームによる132件の研究のレビューが、いずれも、ひとつの結論を導き出しています。
・(脳トレゲームを行った場合)当該脳トレゲームに関連した能力は向上しても、似たような認知機能を使う他の作業の能力にまで効果が及ぶことはないことを示している
実際、脳トレゲーム「ルモシティ(Lumosity)」を提供していたアメリカの会社は2016年、「日常的な知的能力を向上させ、老化による認知障害を軽減、または遅延させるという根拠のない主張で消費者を欺いた」として、米連邦取引委員会の訴えに応じる形で200万ドルの罰金を払っています。
つまり、脳トレゲームをやりつづければ脳トレゲームには習熟できるけれど、そこから先、脳に効いている、認知能力を上げたり低下を防いだりできる、とはいえないのです。