人間の知能は遺伝で決まるのか? 環境で決まるのか?
この論争に、2012年に『ネイチャー』誌に掲載された論文である種の「決着」がついていたことを、みなさんはご存知でしょうか。
「大人になってからの知能指数(知力)に関して、DNAで決まるのはわずか4分の1。残りの4分の3は、環境や生活習慣などで決まる」——
つまり、もし通常の家庭で育ったあなたの子供がテストで悪い点数を取った時に、「親が馬鹿だからしかたがない」と言い訳をしたら、「4分の1は親のせいかもしれないが、4分の3は本人の努力。だから、あなたは努力が足りない」と冷静に諭すべきなのです。要は、本人の心がけ次第だ、ということ。
科学の進展によって、このような脳や知力に関する研究成果が日々発表されています。が、正直にいえば情報があまりにも多く(脳に関する学術論文は、1日に3000本以上発表されています)、中には商品の宣伝目的で誇張がひどかったり、曖昧な形で世間に流布してしまっているものも多い。いったい、何が正しくて、何を信じればいいのか——?
そんな問いに答える好著が、ジェームズ・グッドウィン著『世界の最新メソッドを医学博士が一冊にまとめた 最強脳のつくり方大全』(文藝春秋刊)です。
グッドウィン博士は、イギリスのエクセター大学医学部の名誉教授、ラフバラー大学生理学客員教授にして、脳の健康に関する世界会議「グローバル・カウンシル・オン・ブレイン・ヘルス」の立ち上げメンバー。脳に関するありとあらゆる研究成果に目を通し、脳の健康にとって重要なこととそうでないことを分類して、今回わかりやすく一冊にまとめました。心を体を蝕むストレスをうまくかわしながら、情報過多の時代にあって注意力を維持しながら頭の中をクリアにする方法など、知力を衰えさせない、意外なアドバイスがたくさん盛り込まれています。
それでは、われわれが知っておくべき、「脳に関する、新しくて重要な事実」をいくつか紹介していきましょう。