これも、まさかの出会いですよ
蒲島郁夫 小泉さん、今日はご招待して下さり、ありがとうございます。
小泉純一郎 出会いというのはすべて偶然ですよ。人生には、上り坂、下り坂、そして「まさか」がある。これも、まさかの出会いですよ。皆さんが書いた『小泉政権の研究』(木鐸社)は、2008年の発刊なんだな。その10年後に蒲島先生にもらうまで、本の存在を知らなかったよ。大体、小泉について書かれた本は、できた時に著者から私のところに送ってきてくれる。どうして送ってくれなかったんだ(笑)。
一同 (笑)。
小泉 しかし、10年後に読んでみて、この学生たちにはぜひとも会って懇談したいと思った。それで、熊本県の秘書課に電話して、蒲島知事が東京においでになる時に4~5人でも当時の学生と一緒に食事しようと誘ったんだ。それが今日、まさか20人以上も出席するとは思わなかったよ(笑)。
蒲島 このゼミは結束力が強いんですよ。
小泉 今日はゆっくりできるよう、しっかり時間を取ってあります。何か質問があったら遠慮なくどうぞ。
全員が公助、共助に頼ったら、もう増税国家になっちゃう
元東大生A じゃあ、私から。アメリカの政治では「小さな政府がいいか」「大きな政府がいいか」が、常に大きな論点になります。小泉さんは日本で小さな政府を試行した数少ない総理大臣だと私は認識しています。ただ、後継に選んだ安倍総理は、わりとプロガバメントな感じで、大きな政府にも見えますが、どうお感じになっていますか。
小泉 アメリカは、日本よりももっと自助自立を推進している。共和党は特にそうだよ。あれだけ大きな移民国家で、共和党があれほど自助を強調しても選挙で強いということはどうしてかって、ちょっと不思議な点があるんだね。貧富の格差は日本より大きいのに。
日本はむしろヨーロッパ的な、どっちかというと大きな政府を目指しているような方向に進むよね。だから、アメリカ的な自由主義とは違う。「天は自ら助くる者を助く」(サミュエル・スマイルズ『自助論』)と言うけれども、結局は自助できる人には大いに頑張ってもらって、世の中で活躍する人が多くいないと、公助、共助の政策はうまくいかない。全員が公助、共助に頼ったら、もう増税国家になっちゃう。
実際、そういうことを有権者に説明するのは、非常に難しい。民主主義の時代だからこそ、非常に難しい。これからもどうやって日本国民に、将来にツケを回さないような政策を理解してもらうかというのは大事だと思う。
元東大生A アメリカに留学した時に驚いたのは、アメリカでは政府に対する不信というのが染み付いていること。日本の場合は、国民がおおむね政府に頼る傾向がある。
小泉 アメリカ人は、小さな政府が好きなんだな。