東京五輪選手村跡地に建設されている分譲・賃貸マンション晴海フラッグで、選手宿舎から一般住戸へのリニューアル工事が完成した板状棟17棟の物件引き渡しが今年初めから3月末にかけて行われた。
大人気物件となった晴海フラッグ
晴海フラッグは、五輪選手村跡地に分譲19棟4145戸、賃貸4棟1487戸のほか商業施設や介護住宅、保育施設などを併設した巨大マンション群を開発するプロジェクト。五輪レガシーはもちろん、希少な都心立地にもかかわらず販売価格が周辺時価の2割から3割安いことがあいまって、266倍もの高倍率の住戸が出現するなど大変な人気物件となった。
すでに販売が終了した板状棟に加えて昨年より、新築されるタワー棟2棟1455戸(25年10月引渡予定)の分譲も開始され、今年5月中旬開始予定の第2期(最終期)をもってすべての販売が終了する。
実はこの物件は販売開始時から購入申し込みにあたってなんの制限もかかっていないことについては、筆者が繰り返し指摘してきたところだ。なぜなら自治体などの公共地、あるいは都市機構(UR)などが絡む不動産物件では、マンションなどの分譲にあたっては、投機的な動きを防ぐ意味で、購入する住戸について「一定期間での転売の禁止」や「業者などの法人による購入の禁止」「業者を介在させたサブリース(転貸)の禁止」などを謳うのが一般的だからだ。
転売を狙う業者や投資目的の個人が台頭
結果は案の定、業者による転売を狙ったまとめ買いや個人でも投資用としての取得を目指す動きが激しくなり、自分たちの住まいとして購入しようとする一般の個人を押しのける形となった。
晴海フラッグの販売期間中、私が仕事の打ち合わせに向かうため都内JR駅前で信号待ちをしていた時のこと。昼食を終えたであろう30歳代くらいのサラリーマン2人の会話が忘れられない。
先輩「おう、おまえ、晴海フラッグ申し込んだか?」
後輩「えっ、いやまだ家買おうと思っていないし」
先輩「あそこ申し込むと儲かるらしいんだよ。知らねえのかよ」
後輩「え、そうなんすか? 先輩申し込んだんですか?」
先輩「あたりまえだろ。買って即転売すれば、何千万も儲かるんだよ」
後輩「でも、どうやって?」
先輩「住宅ローンで買うの。奥さんとペアローン使えば銀行は貸してくれるぞ」
後輩「でもうちは晴海に住むつもりもないし、ローンの返済が……」
先輩「だから即転売するんだよ。それで違うところを買えばいいだろうが」
こんな人々が群がったのが晴海フラッグだ。実際、タワー棟を残してほとんどの物件の販売が終了した今、どんなことが起こっているのだろうか。