“投資ゲーム状態”になってしまった晴海フラッグ
あるサイトによれば掲載物件数はなんと116件。月額賃料は30万円台を中心に高層階や海を望む部屋になると40万円から60万円台をつける。これを坪当たりに換算すると15,000円から16,000円、高い物件では20,000円から25,000円となる。投資利回りで換算すれば、坪300万円で買って月額坪15,000円で運用するわけだから、表面利回りで6%となる。住宅ローン金利は0%台だから6%の賃料を得られれば当面は困らない。ローン返済も楽々だ。ちなみに住宅ローンで購入した物件を賃貸で運用するのはご法度だが、世間では勝手に運用しているケースが後を絶たない。
こんな投資ゲーム状態になってしまった晴海フラッグ、どうしてこのような事態が起きてしまったのだろうか。
まだ東京五輪開催が決定して間もないころ、私は東京都の関係者から相談を受けた。
「牧野さん、選手村の跡地利用としてデベロッパーに卸して、マンションとして売却してもらおうと考えているのだが、どの大手も及び腰で引き受けてくれない。なぜなのか」
これに対し私は、「そうだと思います。今首都圏1都3県で新築マンションは年間3万戸程度の供給にすぎません。そこに1か所で4000戸もの販売をするのはしんどいです。私がデベの社長だったら逡巡しますよ」と答えた。
アベノミクスが呼んだ不動産価格高騰
これを映し出すかのように、デベロッパーはリスクを分散して11社もの連合を組んでこの事業を受けた。都は都内の不動産開発で大きな許認可権限を持っているので、デベロッパー側もおいそれと断るわけにはいかない。そこで呉越同舟で何とか事業を受け、その代わり、土地はかなりの安値で、しかも通常であれば設定される転売禁止や法人買いの制限、サブリース禁止などの制約条項が撤廃されたうえで受けたものと推測される。
結果は思わぬほうに流れた。アベノミクスによる大規模金融緩和で不動産価格は高騰。これに引きずられた不動産投資需要が大いに盛り上がった結果、業者だけでなく、猫も杓子も「晴海フラッグ申し込もう」のブームを招来したものと考えられる。
昨年から始まったタワー棟の販売から、申込にあたっては1名義2戸までの制約が付けられたが、これはこうした指摘、批判に対する「やってる」感の演出にすぎない。法人なんていくらでもペーパーカンパニーを作れるし、個人でも夫婦や友達、親戚を使って申し込むことだってできるからだ。