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「頼もしくなった」「また、夏がある」日本航空石川野球部 惜敗の甲子園で見えた次の道

「頼もしくなった」「また、夏がある」日本航空石川野球部 惜敗の甲子園で見えた次の道

日本航空石川センバツ出場秘話#2

source : 週刊文春Webオリジナル

genre : ライフ, 社会, スポーツ, 教育

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 能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市の日本航空高校石川(以下、航空石川)が3月25日、春の選抜高校野球大会に登場。強豪・常総学院に1対0と惜しくも敗れたが、甲子園を目指して県外から航空石川の門を叩いた女子生徒がいた。また、アルプススタンドには、後輩たちに甲子園の夢を託した今年度の卒業生たちの姿も――。

応援に感謝する日本航空石川ナイン Ⓒ文藝春秋

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マネージャーの新2年生・横田彩弥さんの「手作りのお守り」

 航空石川野球部部員は、新3年生と新2年生合わせて67人。うち新3年生を中心とした主力メンバー32人が、1月中旬、兄弟校の日本航空校がある山梨キャンパス(山梨県甲斐市)に集結し、練習を再開していた。選抜出場の決定を挟み、残りの部員が合流したのは、2月中旬のことだった。

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 航空石川野球部マネージャーの新2年生・横田彩弥さんは、2月2日に山梨入りした。女子寮の一角で寝泊まりをしながら、震災後初めて全部員が一堂に会する日を待っていた。全員が揃ったら、同学年の新2年生野球部員35人に、アンパンマンの顔をかたどった手作りのお守りを手渡すつもりだった。

「昨年末から、自分の分も含めて36個を作り始めました。同じ学年の部員に、特別にお守りをあげたくて。全員が揃い、お守りを渡すと、みんなすごく喜んでくれて、次の日からさっそくカバンにつけてくれました」

 そう語る彩弥さんのカバンにも、丁寧に作られたフェルト地のアンパンマンのお守りがぶら下がっている。「見ている人に勇気を与えるヒーローになってほしい」。大好きな人気キャラクターにちなみ、そんな願いを込めて作成したものだった。

横田さん手作りのアンパンマンのお守り Ⓒ文藝春秋

 地震の当日は、実家のある富山県高岡市の親族宅にいた。航空石川の校舎は、路面や建物の一部が損壊し、とても戻れる状態ではなくなった。同校は、彩弥さんが“甲子園出場”を志して選んだ進学先だった。

「野球が大好きな父と兄の影響で、私も野球が大好きになったんです。兄は、私が小学生の時、甲子園に出場しました。私も甲子園に行きたくて。中3になると、甲子園を目指せる高校で野球部のマネージャーになることを最優先に考えて、進路を決めました」(同前)