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ライバル校から異例の「応援」も…能登を背負った「日本航空石川」甲子園を彩った奇跡の3校合同演奏

ライバル校から異例の「応援」も…能登を背負った「日本航空石川」甲子園を彩った奇跡の3校合同演奏

日本航空石川センバツ出場秘話#3

source : 週刊文春Webオリジナル

genre : ライフ, 社会, スポーツ, 教育

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 甲子園球場で開催中の選抜高校野球。元日の能登半島地震で甚大な被害を受けた石川県輪島市の日本航空高校石川(以下、航空石川)が、出場校の一つに選ばれた。

 登場したのは、3月25日に行われた1回戦最後のカードとなる常総学院戦。航空石川の1塁側アルプススタンドでは、選抜出場校のライバル近江高校の吹奏楽部が「友情応援」に加わっていた。

3校が合同で吹奏楽団を結成 Ⓒ時事通信

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新曲「まれ」主題歌を披露 100人の合同吹奏楽団

 1回の裏、航空石川の攻撃。最初に演奏されたのは、輪島市を舞台としたNHK朝の連ドラ「まれ」(2015年上半期)の主題歌「希空~まれぞら~」だ。航空石川、兄弟校の日本航空(以下、航空山梨)、選抜出場校でもあった滋賀県の強豪・近江高校の3校合同吹奏楽団、総勢約100人による大迫力の演奏だった。

 航空石川吹奏楽部顧問の久保綾乃さんが語る。

「準備した17曲のうち、『まれぞら』は初披露となる新曲でした。さらに、近江高校さんの代表的なチャンステーマ『ファイアボール』を演奏することになっていました」

同じ日に2回戦を突破した星稜 Ⓒ文藝春秋

きっかけは吹奏楽部顧問・樋口心さんが入れた一本の電話

 友情応援のきっかけは、近江高校吹奏楽部顧問の樋口心さんが入れた一本の電話。相手は、8年前に海外ボランティアの研修で知り合った日本航空学園理事長補佐の佐久間京子さんだった。樋口さんが振り返る。

「選抜出場校が発表された1月26日の夜に、発災後初めて旧知の佐久間さんに連絡をしました。能登は大変な状況でしょうから、『何か手伝えることはありますか』『吹奏楽部の練習はできていますか』と」

 感激した佐久間さんは、ただちに理事長の承諾を得て、樋口さんに折り返しの連絡をした。

「電話を切って、ものの20分くらいだったと思います。近江高校の許可はまだでしたが、その時点で決まったようなものでした」(同前)

 ただ、航空石川の吹奏楽部は13人のうち10人がタジキスタンやモンゴルからの留学生で、年末年始は母国に帰省中。地震による被害で輪島市にある寮は使えず、留学生たちはすぐには戻って来られなかった。

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