五十嵐 友達の家はおもちゃがいっぱいあったし、「シルベーヌ」という小さいケーキのようなお菓子をお皿に乗せて出してくれたり、「友達は素敵なおやつを食べているんだなあ」と格差を感じました。うちではスナック菓子を食べたりはしていましたが、何も無いときは煮干しや鰹節をこっそり食べていました。
――お小遣いはあったのでしょうか。
五十嵐 高校生のときは月に5000円お小遣いをもらっていたので、意外に一般的な額だったと思います。振り返ってみると、両親のお金の使い方のバランスの悪さを感じる点は他にもいくつかありました。
普段は夕食のおかずが家族4人でサンマ1匹だけだったりするのに、母が精神的な不調でお惣菜を買いに行くこともできないときは出前を取ることがありました。
両親の趣味はパチンコで、父はお小遣いの範囲内でしたが、母は自制できず生活費まで注ぎ込んでしまったことがあったようです。生活保護を受給するようになってから2人ともパチンコは止めましたが、母は隠れて行くことがあり、私や兄が気づいて叱ることもありました。法律上パチンコが禁止されているわけではないとはいえ、やはり「ダメでしょ」という意識がありました。
風呂はせめて「週2~3回」は入りたい
――生活保護について、良くなってほしい点はありますか?
五十嵐 風呂の無い家庭は1人につき週1回分、年間50枚ほど銭湯の入浴券が配布されるのですが、せめて週2~3回以上に増やしてほしいです。週1回は辛過ぎました(笑)。ただ、入浴券を増やすより風呂付きの家に引っ越しさせるほうが金額は安く済むはずなんです。でも今の法律では「風呂に入りたいからと引っ越しをするのは贅沢」という扱いなので、そういった現代の価値観と合っていない部分が改善されたらいいなと思います。
また、何よりも受けるべき人にきちんと支援が届いてほしいです。どうしても悪いイメージが強いですが、不正受給の額は生活保護費全体の0.29%といわれています。日本の生活保護利用率は諸外国に比べても低いほうで、必要なのに支援が届いていない世帯が多くあると思います。
――どの程度生活に困ったら生活保護を申請してもいいのか、悩む人は多いのでしょうか。
五十嵐 真面目な人ほど生活保護の申請を躊躇してしまうと思います。困ったら、まずは行政の窓口に相談するのが大切だと思います。しかし、生活保護の申請を受理する基準は職員や自治体によって異なっており、無下に断られたために心が折れてしまう人もいると思います。我が家も最初に申請に行ったときは断られました。
窓口で対応するのは一般の事務職なので、貧困家庭や精神的な病気に対する理解度に個人差があります。福祉の専門知識のある職員にアドバイスしてもらえるようになるといいなと思います。