マドンナ、母親、天使――女性キャラは役割消費されがち
少年漫画の主人公は少年だ。当然、描かれる「女の子」はどうしても「客体としての女性キャラ」となる。例えば部活のマネージャー、憧れの先輩、争奪されるトロフィー、支えてくれた亡き母親などだ。
例えば映画『ONE PIECE RED』(2022年)には、CGで紅白にも出演した女の子キャラクター・歌姫UTAがいた。彼女は天才児で、父や師と仰いでいた男達から嘘を教えられて育ち、それに則って行動しただけなのに、最終的に物語全体の罪を負わされて自滅する。
UTAに歌声をあてたAdoとと楽曲群のすばらしさゆえにその悲惨さはあまり目立たないが、完全に捨て石だった。上げるだけ上げてから落とされて、いいところは少年ルフィが持っていく。愚かな女のしりぬぐいは大人の男シャンクスがしてくれる(騙していたのは彼らなのに)。21世紀になってもまだ少女はこんな使い捨ての駒として描かれるのか、と痛感させられた。
ブルマの冒険少女、仕事、子育て、経営者というキャリアパス
しかしブルマは違う。第1話から登場し、主人公とコミュニケーションを取り、ドラゴンボールという宝物の存在を悟空に教え、冒険のきっかけをつくる。ページにつねに出ているわけではないが、物語世界のどこかで生きていて、何か発明品を持って戻ってきては、悟空達を支える。ブルマは女性の目から見ても納得のいくライフステージの変遷をたどった。
恋する冒険少女の時代を経て(ヤムチャとつきあっていた)、仕事のできる大人となり、恋愛よりはむしろ憐憫の情からベジータと結ばれて息子(トランクス)を産み、育児をし、父・ブリーフ博士から家業のカプセルコーポレーションを継ぎ、子どもの手が離れ、また仕事がノッてくる時期までもが描かれる。
やがては会長職に就いて経営手腕を見せながらも、エンジニアとして手を動かす原点も忘れない。ブルマは年齢とキャリアにあわせ、髪型も服装も変わっていく。それなりにお金はかけていそうだが機能性を優先したファッション、流行を取り入れつつ意思の強さを感じさせる髪型、足元は動きやすいブーツが多かった。