80年代の日本を舞台にした話が、イギリス人監督の手によって、新たな映画に生まれ変わった。今月19日公開の『異人たち』は、『さざなみ』『荒野にて』などで知られるアンドリュー・ヘイ監督が、山田太一の小説『異人たちとの夏』を映画化したもの。
舞台がイギリスに、主人公がゲイの男性に
日本でも一度映画化されているが、この映画では舞台がイギリスに、主人公がゲイの男性になるなど、大きく変わっている。自分にとってパーソナルな映画にしたいという思いが、ヘイ監督の中に強くあったせいだ。
「今から4、5年前、プロデューサーが本を送ってくれたんです。
読み終えてからも、頭を離れませんでした。ずっと前に死んだ両親にまた会うというコンセプトに魅了されましたし、そこをきっかけに、過去に受けた心の傷に向き合うというテーマを語れるのではないかと思ったのです。
ですが、原作小説はとても日本らしい話。イギリス人の私はそれをどう語ればいいのでしょう? 私は、時間をかけて脚色作業をしながら、個人的に最も共感する部分を残し、そうでないものを排除して、自分にとって最もしっくりくるストーリーを作っていきました」と、ヘイ監督。
「この映画にできるだけ自分自身を入れてやろう」
パンデミックで欧米が都市封鎖状態になったことも、影響を与えている。
「私は、家族と友達がいるイギリスから遠く離れたロサンゼルスであの時期を過ごしました。あの時は、誰もが人とのつながりや死について深く考えたと思います。
そんな中で脚本を書いていた私は、この映画にできるだけ自分自身を入れてやろうと決めたのです。細かいところまで個人的であればあるほど、逆に幅広い人たちの心に響くとも、私は信じていますし」
主人公アダムをゲイにしたのも、その流れだった。