ときには「膀胱をやわらかくする薬」に頼ったことも……。忙しく、なかなかバスを離れられないドライバーたち。いったい彼らはいつどこでトイレを済ませているのか? バスドライバーのトイレ問題を、元バスドライバーの須畑寅夫氏の著書『バスドライバーのろのろ日記――本日で12連勤、深夜0時まで時間厳守で運転します』(三五館シンシャ)より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)

なかなかバスを離れられないバスドライバーはいつトイレを済ませているのか? 写真はイメージ ©getty

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バスドライバーの「トイレ問題」

 バスドライバーになって困ったことがある。寒いと小便が近くなってしまうことだ。

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 年齢を重ねるごとに小便が近くなってきた。乗務中、小便の我慢がかなり苦痛となる。私の場合、冬場の早朝だと30分もすると小便に行きたくなる。そんな状態だから、営業所から出庫する前にはもちろんトイレに行く。

「回送」で始発のバス停に向かい、念のため、そこでもまたトイレに行く。ただ、始発バス停にトイレのないところもあり、そのときは我慢するしかない。

 乗務するルートは日によってまちまちだ。海老名駅から片道10分で終点に着くルートもあれば、たとえば、海老名駅発・羽田空港行きの高速バスのルートだと、第3ターミナルまで1時間10分はかかる。この間、運転士はトイレに行けない。

 また、朝は慌ただしく、路線によっては道路が渋滞したり、お客の乗降が多く、その対応で大幅に運行が遅れたりすることがある。そうなると折り返し地点に到着後、すぐに次の運行をせねばならず、トイレに行く時間がなくなってしまう。

 トイレに行きたくなるのは生理現象なので、ルール上は営業所に無線を入れれば運行に遅れが出てもトイレに行ってよいことになっている。しかし、そうはいっても現実的には難しい。

 トイレに行くためには、バスを待っているお客の横を通り抜けることになるのだ。膀胱が四の五の言っていられない状況に追い込まれていれば、考える間もなくトイレに駆け込むだけだが、中途半端な状態が一番困る。

「行っておいたほうがいいよな」「いや、出発予定時刻はすぎているし、この程度ならまだ30分は我慢できるぞ」「でも、万一、我慢できなくなったらどうする」「帰りの路線は道路も空いているし、前回も大丈夫だった」……。私の中の「行っておけ」派と、「まだ大丈夫」派が闘っている。

 で、たいてい「まだ大丈夫」派が勝利する。朝の混雑時、出発を遅らせてお客を待たせてまでトイレに行く勇気は私にはない。

 トイレを我慢して、折り返し運行を決行すれば、当然、運行中にトイレに行きたくなる。