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「秩序がある日本で解任されるとは……」

 しかし、いずれにしても彼には同じことが二度も起こってしまった。ワールドカップを前にして解任された、ということだ。8年前にはコートジボワールで、今回は日本で。(注・2008年夏にコートジボワール監督に就任し南アフリカW杯出場権を獲得したが、本大会前の2010年2月に解任)

――おそらく、あなたはワールドカップを前に二度解任された世界でも珍しい監督なのでは?

「いや、その二つのケースは比較できないな。アフリカ(コートジボワール)ではベンチに座ってから24試合目に、最初の敗北を喫して解任された。しかし、それがアフリカだ。あちらでのケースは何らかの形で予想されることだろうし、起こり得ることも分かるだろう。結局のところ、大統領(ローラン・バグボ)が解任を決めた。あれは政治的決定だったのさ。そのように物事が運ぶこと、政治がストーリーを仕立てることは君も分かるだろう。だったら、解任されたところで簡単に呑み込めるものだ。

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 しかし、それが日本で起こるのならば、秩序があり組織化された国でそのようなことが起こるのならば本当にショッキングだ。まだ私は自分を取り戻すことができない。(最終予選では2次予選の)1位同士でワールドカップ進出を懸けて戦い、グループ首位となって本大会出場を決めた。すべてが正常な流れで来ていたんだ。そしたら、青天の霹靂のように『解雇』だ。分からない。本当に私には説明ができない」

本田圭佑と話すハリル。解任の理由はコミュニケーションの問題とされた ©杉山拓也/文藝春秋

「日本人の歩みが遅いので、私は注意してきた」

 とはいえ、最近のハリルホジッチとの会話の中で、彼がそこまで楽観的でも幸福感に満ちあふれているわけでもなく、日本サッカー界のある事柄が気に食わないという印象を我われは抱いていた。それを彼は公言もしていた。選手のクオリティはもっと高いと期待していた、協会の野心はもっと強いと期待していた、といったように。

「経済的に世界で最も強い国の一つとして、かつ安定した国として、日本はサッカーにもっと投資しなければならないと私は口酸っぱく言ってきた。多くの日本より貧しい国、小さな国が、ある点で先に進んでいる。日本人の歩みが遅いので、私は彼らに注意してきた。若い選手の育成から、その先のことも……。

 一方で、(日本では)勝ち続けること、ワールドカップのグループステージを突破することが期待されている。私は見てきたものを率直に話してきた。ある者にとってはそれが気に食わなかったのかもしれない。ただ、自分が思ってもいないことを話すことなど私にはできなかったんだ」

ショックでまだ自分を取り戻せないと語ったハリル ©杉山拓也/文藝春秋

「日本人とすべてを解決する必要がある」

 オファーが尽きないと我われは予想しているが、ヴァハは間もなく新たな仕事を持つことになるのだろうか?

「もちろん、オファーはあるし、既に連絡も来ている。しかし、現時点では新たな仕事について考えていない。まずはしっかりと休みたいんだ。それから、どこで何をやろうか考えようと思う。ゆっくりと。まずは日本人(日本サッカー協会)とすべてを解決する必要があるし、時間はある。こうなるなんて予想していなかった」

 今のところ、(彼が話せるのは)これだけだ。元雇用者とあらゆることを明確に解決した時、彼を苦しめるすべてのことが表沙汰になるかもしれない。だが、明らかに多くのことに彼は苦しんでいる。

翻訳/長束 恭行