波高約2mの津波が押し寄せた九十九湾
2024年1月1日は正月とあって、多くの船が接岸していた。
ところが、輪島市と志賀町で最大震度7の烈震が起きた。能登町の震度は6強。九十九湾には波高約2mの津波が押し寄せた。
石川県漁協の小木支所、坂東博一参事が説明する。
「揺れによる崩落と津波で岸壁が約200mほどなくなってしまった場所もあります。漁船は引き波でロープが切れてひっくり返されたり、接岸していた岸壁の崩落で沈んだり、寄せ波で岸壁に打ち上げられた後、引き波で落とされたりと、様々な形で沈没・転覆しました。小木地区では40隻ほどの漁船が被災しました」
イカ釣り漁船には中型と小型がある。100tクラスの中型船に大きな被害はなかったが、5t未満の小型船では沈没・転覆が目立った。
冒頭の「漁船の墓場」に並べられていたのは、こうした船だ。
漁業関連施設の被災、資源量の減少
港では漁船だけでなく、漁業関連施設も被災した。
燃料関係では配管が損壊し、残った配管でだましだまし給油を続けるしかなかった。
製氷施設は断水の影響でなかなか氷を作れなかった。足りない分は金沢港の製氷施設から陸送し、運賃がかかった。国の補助は50%しかなく、残りは漁業者の負担になった。被災で十分漁に出られなかった時に手痛い出費となった。
しかも、イカ漁にとっては悪い時期の被災だった。
中型イカ釣り漁船が主力となっている船凍スルメイカの漁獲量は2023年、歴史的な少なさとなり、それまでに最も少なかった年の半分ほどに減った。「以前は例年2000t程度の水揚げがあったのに、約800tに落ちたのです」と坂東参事が語る。
原因は資源量の減少だ。海水温の上昇でイカの回遊ルートが変わったと指摘されており、外国船による乱獲も一因とされる。「この4年間は北海道で全くスルメイカが獲れなくなりました」と坂東参事は嘆く。
1航海で50日ほど操業する中型イカ釣り漁船は、イカの北上に合わせて北海道・オホーツク海まで群れを追う。このため、小木港を母港とする漁船にも極めて大きなダメージがある。
こうした苦境を受けて、小木港を母港とする中型イカ釣り漁船も1隻が2023年で廃業した。
「石川県には残り9隻。うち1隻は小木を基地にしている輪島市の船なので、小木の船は8隻です」