1ページ目から読む
2/4ページ目

 両親が亡くなれば、自動的に子どもである私たち4人のきょうだいが、この九十九里浜の土地を引き継ぐことになる。「こんな土地いらない」と放棄したくても、今の法律では一部の土地だけを相続放棄することは許されていない。つまり、0か100の選択しかなく、都合のよい財産だけを相続することができないのである。

仮に相続放棄をしても「縁が切れる」わけではない

 仮にすべての財産を相続放棄したとしても、民法上、管理責任は残ることになる。そうなると、土地をめぐるトラブルが発生した場合、相続人が責任を負わなくてはいけなくなる。

 その土地に不法投棄のゴミが捨てられたり、樹木が道路にはみ出して通行の妨げになったりした場合は、土地の相続人が割り出されて、責任を追及されることになる。

ADVERTISEMENT

近くの竹藪には土管やホースが無造作に置かれていた

 しかも、現段階では4人のきょうだいでこの土地の責任を分担することができるが、このまま放置し続けてしまうと、4人の子や孫にまで責任が及ぶことになる。これが末代まで続けば、最悪の場合、会ったこともない遠い親戚同士が、見知らぬ土地の責任をなすりつけ合う事態に発展してしまう恐れがある。

 私の代でこの負動産を処分しなければ、多くの子孫に迷惑をかけることになる。その最悪のシナリオだけは、是が非でも避けたい。

「土地を売る」と聞いて乗り気だった不動産屋の営業マンだが…

 こうして私の不動産屋めぐりが始まった。地元の不動産屋に「土地を売る」といえば、営業マンは前のめりになって話を聞いてくれた。しかし、いざ現地視察をすると、誰もが「この土地は誰も買いませんよ」と、首を横に振った。