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荒れ果てた雑木林という他に、不利な条件が多々あった。その土地にたどり着くまで、太陽光パネルの間の未舗装路を通り抜けなくてはいけなかった。「海の近くで川のそば」という立地も、東日本大震災以降、土地の価値を大きく下げてしまう要因にもなっていた。
「このまま放っておいても大丈夫ですよ」
不動産屋にそう言われたこともあった。固定資産税が発生しない「無価値の土地」のため、知らぬふりをして放置しておくのも手だという。
しかし、今年4月から不動産の相続登記の義務化が始まり、違反した場合は10万円以下の過料が科せられるようになった。その後の対応については法的に明記されていないが、放置し続けたら、子や孫に何かしらのペナルティが発生する可能性は十分にあった。
どうにか見つかった業者から出てきた「30万」という金額に一瞬安堵するも…
再度、司法書士事務所に泣きついた。
「不要な不動産を専門で引き取る会社があるので、そこにあたってみます」
スタッフが知り合いのつてを辿って、二束三文の土地を買い取ってくれる業者を見つけ、数日後、見積り書の金額を見せてくれた。
30万円――。ようやく買い手がつき、ほっと胸を撫でおろした。1000万円で購入した土地を30万円と言われたことはショックではあるが、負動産が手放せただけでも良しとしよう。
「何か勘違いしていませんか?」