「ずっと福士くんが嫌いだった」
──いいシーンにするためとはいえ、相手に嫌われてもいいという覚悟がないとできませんね。
作品の世界観のためにも、「嫌われても構わない」という気持ちで撮影期間を過ごしていましたし、湖に一緒に落ちた時も圭介としての覚悟でした。実は先日、映画の撮影ぶりに松本さんにお会いしたのですが、「あの撮影以来、ずっと福士くんが嫌いだった」と話してくれたんです。複雑な思いもありますが、圭介と佳代でいられた証なのかなと前向きに捉えています。
今回の撮影では、松本さんと雑談をすることが一切ありませんでした。僕は普段、共演者の方やスタッフの方とラフにお話しすることがほとんどなのですが、今回だけは作品上での関係性を徹底したくて。松本さんに話しかけることも、笑顔を見せることもしませんでした。
──撮影に入る前に松本さんと話し合って、親しくふるまうのをやめようと決めたわけではなかったのですね。
そうなんです。でも先日お会いした際に、当時の僕の思いを伝えることもできましたし、圭介としてではなく、福士蒼汰として初めてお話しできて嬉しかったです。
お話しして改めて感じたのですが、松本さんはすごく愛情深い方なんだなと。だから、ある種突き放すような接し方をしていた撮影期間は、苦しい思いをさせてしまったかもしれません。でも作品が素晴らしいものになったという気持ちは一致しているので、多くの方々に観ていただきたいなと思っています。
──作中の圭介と佳代の距離感も、近いのか遠いのか、見方によっていろいろな解釈ができます。ふたりの関係性をどのようにとらえましたか?
圭介は奥さんとの間に子どもが生まれて「家族」を背負うプレッシャーや、狭い組織内での上司からのパワハラにがんじがらめになっている不自由を感じていて、そんな時、たまたま佳代に出会った。そして佳代は、依存する対象を求めていた先にちょうど圭介がいた。ただそれだけだったのではないかと思います。