だから、佳代の心が圭介に向いてくるのを感じたあたりから、圭介は佳代から離れることを決める。お互いに愛情があったわけではなかったからこそ、決して噛み合うことのない二人だったのではないでしょうか。
浅野忠信さんを質問攻めに
──松本さんだけでなく、浅野忠信さんとの共演シーンも多かったですよね。浅野さんはどんな方でしたか?
浅野さんは、演じる上での僕のロールモデルでした。圭介の先輩刑事である伊佐美を演じているときの怒りの感情など、お芝居への入り方がすごく勉強になりました。
監督が僕に伝えていたことをまさに体現されている浅野さんのお芝居を拝見したときには、鳥肌が立つような感動さえも覚えました。
浅野さんは海外の作品にも挑戦されていますし、僕も2年前に海外のドラマに出演させていただいたので、オーディションや英語の勉強方法などについて、ひたすら質問攻めにしてしまったことを今でも覚えています。
──この作品を通して、湖に対する見方や考えは変わりましたか?
琵琶湖はものすごく大きくて海のようにも見えます。でも、当たり前ですが波がないんです。水深100mぐらいの深い部分もあったり、戦時中のものがいまだに沈んでいたりするそうで。
海や川と違って動きがなく留まっている、という点が今作においても、すごく重要な要素になっていると思います。
目に見えないところに堆積した時間と気持ちがあって、今がある。それを教えてくれるのが湖なのかな、なんて思うようになりました。
──湖のように観客の心に今作を留めるために、意識されたことを教えてください。
どう見せようかという意識ではなく、動物的であるかどうかという部分を念頭に置いてお芝居しました。
動物というのは本能的だから、人間からすると次にどう動くかが予測できないときがあります。動物園に行くと、ライオンが寝ている姿を、起きるかもしれないと思いながら、ずっと見たりしますよね。それは脳みそで考えている人間ではなく、本能で動く動物が魅力的だからだと思うんです。動物のように本能的に動くことを体現できたとき、役者として魅力的なものになるんじゃないかと考えるようになりました。